「勉強しなさい」

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「勉強しなさい」と言わない。

という実験をやってみた。

今まではクラブチームだったから、試験前も練習は休んでこなかったけれど、今回はもう進路も決定していることだし、その進路を考えたら決して負けられない期末テストだということはわかっているのだから、一週間練習を休んで頑張ってみようと言ってみただけだった。

この成績は、高校のクラス分けの指針になる。

幸い、英検も所定の級に合格したし、モチベーションは上がっている。「勉強しろ」と言わないでどれぐらいできるかを見てみたかった。

そうしたらね。

ちゃんと結果を出してきた。付け焼き刃の集中力には眼を見張るものがある。といって、別に難関校合格圏とか言う訳では全然ないので、大変微妙ではあるのだが。それでも、本人は貼りだされた名前を見て喜んでいるのだから結構なことだと思う。

そうかあ、「勉強しなさい」といくら言っても言わなくても結果は同じ、いやむしろ、言わないほうが結果がいいなら、これからは何も言わないほうがいいんだな。

そう心に決めた。全部自分。決定も、努力も、継続も、転換も。そして後悔や批判や、何より栄光も、全部自分。

そう決めた、んですよ。確かに。

「勉強しなさい」とは言わない。宿題も山盛り出ているけど、見もしない。

で、迎えたこの夏休みですよ。何この夏休み。クラブチームでの合宿は二回もあって、練習はみっちりあって、そこそこにヘトヘト。しかし、中3なので週末は練習会やセレクションや夏期講習用にあいていることも多く、そんな日、練習会にもセレクションにも夏期講習にもご縁のない小僧は、ゲーム三昧。いいのか、これで? ホント?

自己申告で日に何時間眠るつもりですか、と聞いたら、きっちり八時間以上。お風呂や食事やお手伝い、テレビ視聴・マンガ・音楽など、生活時間にどれ位かかりますか、と聞いたら、四時間以上かなー。その上で、ゲームをどのぐらいやるつもりですか?と聞いたら六時間は欲しいと答えやがった。

サッカーのある日は、そこに加えて往復と練習でおよそ六時間。遠征だともっとかかるわね。

一日は二十四時間です、おぼっちゃま。いつ、どうやって宿題の時間をひねり出すんだ。他の中3は今や、日に六時間は勉強してんだぞ。

「そんなに勉強したら、頭がおかしくなる」

って、去年学校が采配してくれた勉強合宿は何だったんだろうか。一日十八時間勉強の特訓、やったんだよね?

「けどさ、マジ、俺の友達でそんなに勉強している奴はいないって」

いる。誰と誰と誰。と、幼稚園だの小学校だのの友人の名前を出してみるが、彼らは昔から優秀で。そこと戦おうと思ってもスタート地点に辿りつけない。

あとは、自分の名前より上に書かれていた名前の子たち。しかしこれはみなさん優秀すぎて、まず同じ土俵に上がれない。

「おかあさんはそういうけどさ、誰と誰と誰も、勉強とか全くしてないって」

ってお前、それはサッカー推薦という錦の御旗があり、サッカーの練習をするのが受験勉強だからだろう。君の進路に、サッカー特待はないんだよ?

こうなったら意地でも「勉強しなさい」とは言わない。サッカーの練習をしろといったことが1回もないのに、小僧はこまめに練習してきたんだから、きっと勉強でも大丈夫。はあはあ。きっと大丈夫だって。はあはあ。

でも、二十四時間から引き算はさせてみた。

「あ」だって。

「あ」。

全然大丈夫な要素がない。勉強する時間が全く取れないことに今気づくか。

気づけてよかったけどな。

なんか難しいクラスもチャレンジ受験してみたいとか言ってるけど、受験勉強の範囲を考えたら、付け焼き刃ではどうにもならないと思うのよ。

いや、まだいろいろ取り返しはつくし、とりあえずエスカレーターだから浪人はなく、チャレンジに失敗しても大学受験でがんばればいいから、やりたいことをやる夏にしたらいいよ。今キミのやりたいことって何? 夢は? そのために何をすればいいか。留学とか?

「マンガとゲームかな」

......ちょっと切れた。

でもこうなったら、意地でも言うもんか。