遺伝子ってやつは

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父の残した小さな土地の取引で東奔西走しているが、久しぶりに密に弟と話すたび、ものすごーーーくうちの小僧と似ていることにびっくりする。

声としゃべり方がヤバイ。

私が車を運転していると、顔を見て話さないわけで、なんだか小僧と話しているような気分になってしまう。ついうっかり「おかあさんはさ」という一人称で喋ると、「四歳しか違わないんですけど」とか、ものすごーーーーーく残念な突っ込みが入る。そのセンスのなさも、よく似ている。

お嬢の声は相方の方の遺伝子だった。相方の姉とその娘にそっくりで、「ママ」と呼ばれたら、それが姪なのか実の娘なのか区別が難しかった。

子どもが大きくなるにつれて発現してくる遺伝子の特徴は、すごく面白い。

弟の声は変である。その変な声は、父譲りでもある。母方に似れば、マットな柔らかい美声だったのに、父の声は濁った金属系の音で美しくない。

家族と、お互いの親族を愛せていないと、こういう部分で面白がれなくなっちゃうんだなあ。ということに気づくが、亡くなった父はすでに仏様なので今更どんなところが似ていてもまあいいんじゃないの、と思える自分の成長っぷりを、私は愛でたいと思う。

父のことはかなり苦手だったのだが、弟に見る父の面影も、その声も、興味深い現象だわ。と、面白いのね。

ところで、私の腰痛がかなりひどい状態で、ストレッチも筋トレも、温泉もマッサージも、鍼灸もロキソニンも、硬膜外神経ブロックまで、とにかくできることはあらゆることを試している。

療法の中で「サラシを巻く」というのがあって、早速アマゾンで購入。今日、ベイマックス状の腹に晒しを巻いてみた。犬の日の岩田帯以来の晒は、妊婦に戻ったようでちょっと嬉しかったりするのだが、何より、痛み軽減にわりと効いているような気がして驚く。

そういえば。

腰痛には父がずっと悩まされていた。ヘルニアと併せて、後年、内臓器の問題もあって、彼の腰痛はかなりひどかったと思う。そんな彼は、私が物心付く前から、ずっとさらしを巻いている人だった。

遺伝で語るなら、このヘルニアもこの筋力も、父譲りの骨格のせいだ。食の好みの味覚が似ているから、私もいずれ胃腸がやられるに違いない。父よりはるかに楽天的という点だけが、私の胃腸を守ってくれそうだと思うことにする。

そして。

最近は、私の中の母の遺伝子がぽちぽち、スイッチオンになっている気がしてならない。

書道具を購入するために活用していたヤフオクで、ついうっかり、古物商のあれがいいの、これがいいのと見入ってしまい、入札しておくと額が跳ね上がっていく目利きゲームをしているうちはよかったのだが、うっかりいくつか入札したものが誰にも気付かれずに落札できてしまったりすると、台所の一画の私のスペースは実家の納戸の匂いが漂うようになってしまった。

やばい。これは、やばい。

古物道楽は、母方祖父の血だ。着道楽は、母方祖母の血だ。享楽的な祖父母も母も、ヤフオクを知らなくて本当に良かった。古物は時代の風俗そのもの。それを手に入れられる可能性、というのは、時間の流れを想像するための鍵のようなもので、その筋が好きなら夢中になってしまう。

これは、考えてみると博物館マニアな私が手を出してはいけない領域だった。ウォッチリストでぽーんと跳ね上がった値段を見てワクワクする感じは、手に入らない無念さこそあれ「私が欲しいと思ったあの時代のこれは、こんなに効果に取引されるのだ」という満足感を与えてくれる。

同時に、ガラクタが積まれていく。

ああもう、こういうのって、確実に遺伝子のナセルワザ。

怖い。

DNAが怖い。いや本当に怖いのは、遺伝子じゃなくてヤフオク。今日もまた、落札おめでとうございますのメールが。ああ......。