音声入力日記に挑戦
朝起きたら首を寝違えていて、午後になっても首が回らない。
相方との間の細かい借金を精算しても、原因は寝違えにあるので、やっぱり現実的に首は回らない。
大人になったら、寝違えるなんてことは空を飛ぶ夢を見なくなるぐらい、ないのだと思ってた。
というわけで、小僧の公式戦だと言うのに、本日横になっている次第。
どうせ寝たきり日記なら、本当に寝たきりで書けるかどうかちょっと試してみようかと思って。
iPadで、音声入力をしている。なう。
そして、
意外に使えるのでびっくりしている。なう。
すごいなぁ、東京オリンピック生まれの私から見れば、これはもうSFに近い。
急ぎの原稿のときはPCでひらがな入力、外出時のiPadから書くならローマ字入力、と決まっていたのだが、うわー、音声入力が最も簡単で最も速いわ。
私が18歳の時、初めてワープロに触った。その時にはひらがな入力しかなかった。
友達は英文タイプのタイピング3級を持っていたけど、大事な事は均等に力を入れてキーを打つことだったりした。
当時の英文タイプは、アルファベットの金具の判子をカーボン紙を通じてスタンプするような仕組み。キーを押せば、その力が判子にダイレクトに伝わるから、力を均等にしないと濃い文字と薄い文字が混在してしまったわけよ。
そんなふうに思い出を語るだけで、既に私は歴史の生き証人なんだなあって、ちょっと不思議な感慨。
私は祖母から、大正時代〜昭和初期中期の日常生活や風俗のあり方を聞くのが大好きだったんだけど、祖母が決して面倒がらずに、面白おかしく話してくれた理由もよくわかる。
歴史の目撃者だったのだ。
代わりに祖母は「今」の流行や風俗をいつも興味深そうに質問してきた。流行の街、流行の格好、流行の歌、本、雑誌。新しい家電、新しい考え方、特に若者の好みや価値観を面白がっていた。
これまた、時空を超えて共感の嵐。実によくわかる。
世の中の流れは早くて、私にはもうすでにいろいろ、ちょっと追いつけないのだけれども、歴史の目撃者として何一つ諦めたくはない。なんでも見たい、知りたい。
幸い、今はあの頃の未来だ。
晩婚だったので、好奇心の塊みたいな孫は持ち合わせていないけれど、インターネットと言う窓が開いているから、興味の対象をすぐ調べられるのがいい。
しかも私の可愛いiPadには、多分イケメンの執事が住んでいて、尻と言う名前がちょっとどうなのよとは思うものの、音声で尋ねたことには、それなりに頑張って答えてくれる。
音声入力の問題点は、外出先では使えないこと。
いつもの文章のリズムじゃないことと、変換がちょっとばかりおかしいこと。
それでも寝たきりのまま、世界のどこにでもつながることができて、文章が書けて、それを世界発信できるなんて、この科学技術はものすごくすてきだと思う。
私がロボットフェチというか、工学系の人が大好きなのは、その優しい想像力を知恵と技で現実に変えられる力を持っているからだ。
首が回らなくて、弓道の初心者講習会に行けない。
首が回らなくて、サッカーの応援に行けない。
ものすごく落ち込みそうな心と体の痛みを、誰かの想像力と誰かの技術と誰かの資金力のおかげで、今こうして割とワクワクしながらしゃべり続けているわけで。ありがとう、優しい誰かさんたち。
あとは、今、誰かが私の代わりにトイレに行ってくれればなぁと思うんだけど、こればっかりはねえ。