歩く人

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ツイッターを開くと、いつもその人は犬とともに歩いていて、私の知らない景色を写真でつぶやいてくれる。
朝もやの草原、朝露に光る草花、水田の成長、見たことのないでこぼこ道、山をバックに賢そうな犬。
お目にかかったこともない方だが、私は彼女の移す写真が好きだった。
朝、歩くのはさぞ気持ちの良いことなんだろうなあ。と、じわじわ下地はできていたのだ。

タイから戻って、妊娠中でもありえなかった体重になっている。
それはつまり羊水と子ども一人分を加算した以上の、何かの重荷である。
背負った重荷を共に背負い、休ませてあげられるような人になることを課していたはずなのに、いつのまにか私自身が重くなっていたのだった。
でも大丈夫、私は今日からウォーカーになる。

さすがにこのままでは健康被害もアリそうだよなあと不安になり、旅行前にちょっとだけ早朝に歩いてみた。
ざくろが旬だということを初めて知ったり、新しい住宅街にワクワクしたりしたけれど、何にしても手持ち無沙汰だった。ツイートするにも、iPadは重すぎる。しかし私はガラ携を愛していて、iPhoneにするつもりはない。
誰にもあわないだろうと油断して派手なUNIQLOパンツを履いていたが、これが意外にドキドキプレイで、肝っ玉の小さな私には向かないと思った。
バンコクではとにかく歩いた。仕事みたいに歩いた。泳いだ。仕事みたいに泳いだ。
そして、ああやっぱり体を動かすのは気持ちいいわ〜と思いつつ、飲みに飲み、食べに食べた。

犬だ。
私に必要なのは、犬だ。
犬がいれば、ウォーカーになれるのだ。
冒頭の彼女だって、シェパードのような犬を連れている。多分おしゃれな帽子をかぶり、さっそうと歩いているに違いない。

ということで、早速犬の里親サイトを見てみる。
犬がいる。たくさんいる。
うわ、この子可愛い。と思うと、徳島。
じゃあこの子はどうかな、この子を育てたい。と思うと、徳島。
なぜか私の欲しいと思う犬は、複数のサイトで徳島なのだった。前世でなにかあったのか、徳島。
徳島まで犬を貰い受けにいく訳にはいかない。
しかし、一人で歩く孤独には耐えられそうにない。

というようなことを、愛犬家の友達に何かの拍子に話したら、それじゃあ一緒に歩こうよという話がトントン拍子でまとまった。
そしてタイから戻って、早速の朝が今朝なのだった。

今帰ってきたところ。
汗だく。
すっごく気持ちよかった。
しかも朝から大笑いして幸せだった。
いきなりとんでもない距離を、実に難なく踏破していてびっくりした。
ストレッチもする。
これからお風呂にはいる。あ、お風呂がわいた。

東京は、清々しくていい街。
ごみひとつ落ちていないきれいな街を歩きながら、ちょっと異邦人の目で東京を眺めてみる。
こんな街に住みたいという街に、今、私は住んでいたのではないか。

汗が冷えてきた。
さあ、朝風呂朝風呂。その後朝寝しないように、頑張らなくちゃ。