太らせるためのスープ

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この夏の課題は小僧を大きくすることだ。
早く寝かせる。
たくさん食べさせる。
丼ご飯は当然だが、肉より魚、こってりよりあっさりが好みの小僧は、黙っていると明太子だけでご飯を食べ終えてしまったりするから、ここは何かこう、栄養豊富なスープを常にお供に、おいておきたい。
思い切ってシャトルシェフを購入した。
五分沸騰させて、あとは魔法瓶のでっかいののような鍋に調理鍋ごと突っ込んでおくと、勝手に煮こんでくれる秀逸なお鍋だ。
これであらゆる野菜と肉を投げ込んでぐつぐつ煮込み、毎日具沢山スープを食べさせるのだ。
煮込んでいるから形がないものも多く、スープというより、これは輸液に近いのかもしれない。
トマトベースが基本。鍋替えの初日だけコンソメや中華が楽しめるが、基本にんにくたっぷり、夏やさいゴッテリなので、トマトが一番相性がいい。
この赤い赤い汁をゆっくりかき回していると、どうしても「ヘンゼルとグレーテルを捕まえた魔法使いのおばあさんが、少年を太らせようとして作っていたスープ」をイメージしてしまい、いや、私は小僧を食べないし!とか頭の中でつまらない葛藤がうるさい。
小僧の足は、まだ細木のようだ。細い棒を掴ませているわけじゃなく、本当に細すぎる。
チームから与えられた課題も「筋力の強化」・・・筋力っていうか、筋肉そのものがないんだもの、スタートラインに立つ前の段階を何とかしなければならないのだ。
プロティンこそ入れていないが、タンパク質は肉と豆でしっかり。毎晩具材を足していくのが案外楽しい。時にはきな粉を入れてみたり、残っちゃった枝豆を入れてみたり、かなり闇鍋化しているのだが、野菜の持つ旨味が一晩でそれなりに美味しく仕上げてくれる。
一ヶ月近くたって、小僧は順調に成長しているが、まだまだ細っこい。
しかし、私の体重だけが跳ね上がった。
右上がりで好景気である。
食生活を考えて、ここにきて突然太るとすれば、原因は、スープ以外考えられない。・・・つまり、このスープはちゃんと太れるスープなのだ。よし、間違いはない。実験済みだ。
小僧、今日も私が身を呈して作っているスープを残さず食うがよい。