今まで生きてきた中で

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おばあはさ、いつ生まれたの?
それで、今まで生きてきた中で、一番大きな出来事って何?

ほとんど何も喋らなかった小僧の、渾身の質問に、ちょっと驚く、おばあ。

伊豆の水害かなあ。
地震かなあ。
......溢れんばかりの自然に囲まれた環境で、自然と格闘してきた人らしい答だった。

そのあと、また一日中ずっとおばあと話しながら、おばあが折にふれて
「今まで生きてきた中で、って突然言われてもなあ。毎日、ただ一生懸命生きて、積み重なって今があるから」
と、それでも小僧の期待に答えるべく、自分史を紐解いている横顔が印象的だった。
いろんなことがあったね。
嫁いで20年目、おばあと共有する思い出もたくさんある。
私は何かなあ・・・。

病院のあと、ちょっと足を伸ばして六義園に行き、巣鴨地蔵通りを歩き、それから帰宅。
相方と三人で飲みながら、宴が続く。
おばあの語りのタイミングは、相方によく似ている。
だから合いの手が入れやすいんだなと思ってみたり、引っかかるキーワードが一緒で爆笑だったり、うまそうにピータンを頬張る相方とおばあと娘を俯瞰で眺めたり。
......私と小僧は、ピータン、食べられないのね。

飲んで、笑って。

そこに、練習で遅くなった小僧からメールが入った。
おばあ、帰っちゃった?
いるよ。
やったー、ずっといればいいじゃん! ゆっくりしていってね、と、お伝え下さい。

一番よそよそしく、一番コミュニケーションが難しそうな小僧が、実は一番歓迎しているのかもしれない。
自分に連なる根っこの、一番大元の部分だしね。
おばあ史上、一番大きな出来事に小僧が生まれてきたこと、という答えはなかったけれど、きっと、それもおばあにとってはものすごく重要な項目の一つだと思うよ、小僧。
あ、おばあにとっては、小僧といえば相方なのだった。
それはもちろん、おばあ史上、五指に入るビッグイベントだっただろうな。
私にとって、そうだったみたいにね。