25.5cm

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今の背番号を刻み込んだスパイクは、出来れば新しい背番号になるまで履いてもらって、背番号が改まった時にサイズの大きなスパイクに取り替えたいと思っていた。
でも、親の都合に合わせて成長する小僧ではない。
靴下が擦れてアキレス腱の下ところに穴が開くソックス、実際に皮がめくれあがる上がる踵を見て、次の大会で三位以内に入ったら、という、ゆるい設定を許した。
そしてチームは準優勝になり、一緒にスパイクを買いに行った。
娘なら、気をつかって必ず安い方を選ぶ。娘は我が家の緊迫している経済状況も知っている。
けれど小僧は決してらない。幾つもの提案をしてみても、カンガルーの皮、絶対カンガルーの皮。色は赤かオレンジか黄色。
しかも、25の次は26を買う予定が、どうしても違和感があるとして、25.5を選ぶようなオトコだよ。
以前にも書いたが、私の靴は最高でもヒラキの1980円である。
スパイクは、好みもあるし使用感も高いために、誰も欲しがらない。雪でも降ったら私が履こうと思う。

とうとう、足のサイズは家族の中で私が一番小さくなってしまった。
娘は166センチ、私より少し目線が高く、腰の線はかなり高い。
高いところのものを取ろうとして、
「おかあさん、腕、短っ!!」と言われて、ひょいっと助けられてしまった。
腕と足の長さには自信があり、既製品に「マイサイズだと短くなるし、腕、脚にサイズを合わせると他が緩すぎるのよね」などと贅沢な文句を言い続けてきた私が、つんつるてんになった娘のお下がりを、ジャストサイズで着ている。派手な色味はインナーに。
愛用はユニクロの男性用パッチは必需品。それに娘のハデハデTシャツを着込んで外出したりしているから、毎度くれぐれも事故にあいたくないと思う。
そこには「決して人前で上着を脱げない、おばちゃんの都合」がある。
こうやって女が終わっていくのだが、サッカーママは丸一日外気に晒されて育っていくもので、かっこ良さより寒さしのぎである。北極の獣並の、たっぷりめの脂肪を身にまとい、未来の日本代表かもしれないチームメイトとわが子を応援するのだ。

足が大きいというと、きっと背が大きくなりますよと言われる。
レトリバーとかサモエドは、確かに子犬の頃から足がデカイが、うちの犬顔小僧はどうだろう。(ちょっとビーグルに似ている。・・・娘はブルテリアに似ているけど、それは公言してはいけない)。
今、小僧は150センチ+数センチ。
高校サッカー選手権を目指す頃には、175センチ、超えるかな。
小さな頃の、初めての紐のトレシュ、初めてのスパイク、サンタクロースにねだったロナウジーニョモデル、都大会のご褒美、初めてのカンガルー皮。当時の写真、足元だけを撮ったものはないのだけれど、写真に収めておけばよかったなあと、今更ちょっと思う。
きっと小僧は、その靴を見るだけで、どの時期だったかわかるから。

25.5センチは通過点だ。
完成されるその日まで、がんばれ。がんばれ。君がどこをゴールにするかは知らないが、おかあさんは応援する。
ひたすらおにぎりをにぎって、にぎって、にぎりまくって、大きくなれよと応援するのみだな。