なでしこ、ありがとう

  • 投稿日:
  • by

小さな島国の、東京の片隅で、私が感謝していたところで、体制にどうということはない。

彼女たちの栄光は大勢の著名人が讃えていて、彼女たちの偉業は大いに讃えられるといい。

だけど、きっと、なんでもない市井の人の中の一人ひとりにも、なでとこジャパンは大きな力と勇気を与えてくれたんだと思うんだ。

私の大好きな近賀は、今回有吉にレギュラーを譲り渡していた。有吉は、アマチュア登録だから、フットサル場の受付嬢もやっているという。ヘタしたらアキバのアイドルよりも簡単に触れ合えちゃうじゃないか。世界を相手に戦っている方に! 

ご苦労もたくさんあっただろう、そんな中での世界二位って、本当にスゴイことだと思うんだ。

佐々木監督は、予選には全員を試合に出したという。全員サッカー。気持ちがひとつになるチーム作り。その話をネットの記事で読んだ時に、私はそんな些細な心遣いにも感動して泣いてしまった。

報奨金が多いわけでもなく、特別待遇の毎日でもない選手にとっては、「ワールドカップのピッチに立つ」ということこそが「夢」だったに違いなく、ピッチに立てることがどんなにか素敵なことか、想像するだけで震える。その夢に近づくために、選手自らがたゆまない努力で励んでひとつひとつ積み重ねていく勝利の数々。最終的に決定権のある佐々木監督は、彼女たちの夢を叶えたわけだ。もう、王子様に近いよね、白馬に乗った王子様に見えたよ。佐々木監督。

全員が「チームに貢献している」という自覚は、チームにはとても大事なもの。きっと決勝にはベンチからの応援であっても、その強い気持ちはピッチの選手を後押しした力になっただろう。近賀押しの私としては、ピッチで躍動する彼女を見られなくても、彼女の力がちゃんと活きていたなでしこジャパンだったと、勝手にそんな風に思っているのだった。

翻って、小僧の話。

戦力外通告から、一転、クラブユース大会にはベンチに復帰した小僧。登録の事情がどうなっているか全くわからないまま、それなりに期するものがあっての復帰だろうからがんばれ!と思っていた。ところが、ここ一番の踏ん張りどころで監督にアピールするあまり無理をし、初めての故障。腰を痛めてしまい、全くチームに貢献できないまま、チームは敗退し、中学世代の公式戦を終えてしまった。

あっけない幕切れ。

ついてない。

まあ、そういう運命なのだろう。(ため息)。

この「貢献できない」というのが、本当にしんどいのよね。これはサッカーに限らず、チームプレーだったら、何でもそうだと思う。

逆に言えば、実はチームに「貢献したんだ」という実感こそが、それがどんな形の、どんな些細な貢献であれ、満足感と次につながるエネルギーなのかもしれないと、最近ではよくよく思う。佐々木監督は、全員を出場させることでまさしく全員を貢献させた。安藤の怪我は、貢献の象徴のようなものだった。名将がベンチに座っている選手にも、ベンチ外の選手にさえ慕われるのは、一体感の中、「貢献した」という実感をしっかり抱かせてきたからだと思う。

カナダで開かれている女子ワールドカップの、大きな舞台に、小さな島国からの一介のおばちゃんの声援などたいした力にはならないことを知っている。知ってはいるが、私達は一緒に君が代を歌い、胸震わせて私達の代表なでしこを心の底から応援する。テレビを通して、一体感を味わう。

そして、今試合を終えた監督やなでしこたちが、まず応援してきたファンに挨拶をしてくれる時、私達は共に笑い、共に涙した意義を、彼女たちからもらうのだ。一番頑張っているのは彼女たちである。それなのに、ああもう勇気や感動をありがとうと、心から湧きいづる喜びに、またしても涙するのだ。

人を感動させるのは、人。

なでしこジャパン、どうもありがとう。

一緒に戦わせてくれて、ありがとう。熱かった日々を、私は忘れない。