起きたら、 8時 55分だった。
「 P子ぉ、大変だっ、遅刻だっ、九時だっ」
飛び起きると、 P子は状況を知って、びぇーびぇー泣き出した。今日はおひな祭り、学校で何かあったらしい。
「泣いている暇があったら前進しろ ! 泣いていたらその分遅くなる。まず行動だっ」
鈴木家の母の教えは、常に実践的である。
眠い頭にはリンゴジュースだ。コーヒーよりリンゴの方が目が覚めると、ナショナルジオグラフィクスで読んだ。着替えはボタンの少ない物を、しゅたしゅた用意した。ああ、どうしてこんな危機的状況になると私はこう頭が冴えるんだろう。そして体が動くんだろう。連絡帳に「寝坊」と記入、顔をお尻ふきでごりごり拭いて、(おしりふき、という商品名は何とかならんか
? )髪の毛をあっという間に整える。すごい、私の天職は美容師だったんじゃないだろうか。ポニーテイルだけでは美容師にはなれないか。
9時に学校から電話があり、「まだ登校していないが」との問い合わせ。その十分後には自転車で校門に到着していた。
すまん P子。母ちゃん、目覚まし止めて二度寝しちゃった。明らかにP子の7時の目覚ましに期待して、かけ直しもしなかった。つまり自分でサバイバルしないと、この母ちゃんはあてにならない。というのが、本日の教訓である。
それでも 9時に起きられたのは福助の幼稚園の「おひな祭り会」に呼ばれていたからだ。今度は福助を起こして幼稚園に連れて行く。
未来に立ちこめる暗雲、ここんとこずーっと忙しくて忘れていた病名と現実をつきつけられ、へこむ。「集団」が苦手なんだよな、苦痛なんだよな。一見まともに見えるのに、他人は一切おかまいなしに自分の好きなことにしか興味を持てない。それが福助の強烈な個性。でも、人という字は支え合い。などと思いながら、私はずーっと福助だけを見ていた。いばらの道だなあ。ああ。
三月に入っていよいよいろんなことが、どわっと。心身ともに疲労困憊。
でも、まついなつきの保健室をのぞいていたら、「それでいいんじゃん、私」と、すっかり癒されてしまい、元気になる。まつい先生に幸あれ。まつい先生のごとくあれかし。しかし、あんな大きなおっぱいと、でっかい心は、今さら手に入れられないなあ。
落ち込んでいても仕方ないし。今までだって勝負のしどころは間違えていないんだし、ちゃんとサバイバルしてきたんだし、イザって時にはレッドゾーンでぎゅんぎゅん走れる自分の力を信じて、ぼちぼち、いこか。