2011年04月26日

幸せの種〜一冊の本〜

巨匠・横山宏氏から『マシーネン クリーガーグラフィックス』第一巻(大日本絵画刊)を頂戴する。
ナイキの社長他、この作品に心酔する方々からすれば、横山宏氏は時代を代表するモデラーでありイラストレーターだが、小僧にとっては最も尊敬するサッカープレーヤーの一人であり、フットサルチーム・フラワーズの監督である。
「うわー、うわー、監督カッコイイ!!」
時間を忘れてうっとり眺めていたが、しばらくしてお父さんに直談判にいくのだった。
「おとうさん、この本、学校に持って行ってもいい?」
「どうして?」
「クラブ活動で使うから。オレ、これ描きたい」
「・・・じゃあ、よし」

抱えて眠ったらしい。今日は遠足なので置いていくが、決して触らないように。と言い残した。
「ああ、オレ、イラスト漫画部でよかった!」
第一希望の囲碁将棋部は将棋盤や囲碁盤の不備で廃部となり、第二、三希望の運動系と科学系は人気で選外、振り分けられたのがイラスト漫画部であった。
「おとうさんの仕事のせいだ。オレは関係ないのに」
と、大変不本意だったのだが、監督の作品を模写してみたいという気持ちになって、突然肯定的になっちゃったよ。

横山監督はサッカーが大好きで、今も現役のサッカー選手として試合に出ている。
もう一つ、サッカーと同じぐらい大好きだったお絵かきが仕事になっている。
可能性を決めてしまわないで、好きなことは何でも一生懸命やること。
サッカーはプロであれアマであれ、一生付き合えるスポーツだから、どんな結果でも、楽しくやること。
そんな当たり前に大切なことを、わずかの時間できっちり刻みこんでくれた。
いいおとなになるために、こどもはいいおとなと付き合うといい。
小僧は「横山監督のように、じじいになってもサッカーをやり続ける!」というのが、究極の目標だ。

サバンかもしれないほどの目と腕を持っている相方の遺伝子が、子どもたちには全く受け継がれなかった。
娘は漫画家の子であることをひた隠しに隠している。
漫画家率が大変多く、美大に進む比率も高い変わった私立にいて、遺伝は大きな財産なのに、彼女は相続できなかったクチなのである。
小僧が幼稚園の頃描いていた絵は、常に赤と黒と紫と緑で、長いこと棒人間ばかりだった。
でも、相方は決して「うまく見える描き方」を教えなかった。
楽しく描くことが大事だし、楽しくないなら描かなきゃいいんだし。という言葉には説得力があったので、私もそこをどうこうしようという指導はしなかった。
絵は、血で描くのかもしれない。
血が騒いだら、描けばいい。
残念ながら小僧には絵の才能もセンスもなさそうだが、それでも横山作品で血が騒いだのなら、楽しいことがひとつ増えることになるだろう。
監督に、好きなことはなんでも一生懸命やってみると教えられている。
一生懸命、模写してカッチョイイ絵が描けたらいい。
サッカー少年が全員プロになるわけではないように、なんでもかんでも仕事に繋げなきゃいけないわけではないからさ。
好きなことをやり続けて得た自分の力を仕事に活かして、得意なことや楽しいことに囲まれて生きていけたらいいね、小僧。それが誰かを喜ばせたり、誰かのためになったら、もっと素晴らしい。

2011年04月26日 09:24