小僧は新しい場所が苦手だ。
新しい人間関係も苦手だ。
クラス替えして、友達が変わって、担任も変わって、教室が変わって。
サッカーのチームが変わって、新しい仲間に入っていくために、選手の個性をひとつひとつ分析していたり。
見ていると、こっちがしんどくなるほど、しんどそうだ。
しんどいと言わずに、苛立っている。
突然とんでもなく甘えん坊モードになる。
と思えば、きかん坊にもなる。
体が急に大きくなり始めて体が重く、初めての成長痛にも見舞われて練習を休むなど、かつての自分では考えられなかったもろもろの変化にも戸惑っているのだろう。
一人で囲碁を打ってなんとか落ち着きをキープしているが、うまく大人に脱皮できるといいなと思う。
苦手は克服したほうが、そりゃあいいに決まっているけれど、無理することはない。
苦手だなあ、と認めていれば、無理しすぎることもない。
ここ苦手なんで、うまくできないけどまあ許してねぐらいの感じでいっとけばいい。
嫌いな物も、「一応、一口だけちゃんと食べます」みたいな。
そのうちに、意外に美味しいじゃん!になればいいし、別にマズイなあ・・・と思っても、健康にはさほど害はない。マズイから、大嫌いだから!って喧伝して歩いたり、攻撃したくなっちゃうとおかしなことになるから、そこはぐっとコントロール。そっと残しておく分には問題がない。
場合によっては無理して食べることも必要になったりするかもしれないけど、そんな場合はごくたまにしかない。できないことはできないままでもしょうがないやと想えばいい。
みんなどこかしら、ダメダメなところがある。
たまたま私やあなたには、普通の人が普通にできることができないから、時折えらくダメダメに見えたり、怠けているんだろうと疑われたりすることがある。
腑に落ちないけど、仕方ない。
そういうふうに生まれついている。
そのかわり、私やあなたには普通の人が頑張っても出来ないことができる。
例えばあなたの存在は、私にとって唯一無二だ。それは他のどんな優れた人でも、代わりがきかない。誰がどんなに頑張ったところで、私にとってあなたほど愛おしく、素敵な人はいない。
ちょっと壊れているぐらいじゃマイナスにもならない、素晴らしい魅力が、あなたにはある。
あなたはあなたの、神様からもらった特技を活かせばいいのだ。
健康で、俊足で、目がいい。
その上、一途だ。
興味のある分野なら、知識も洞察も、とてつもなく深い。
もっているものの少なさを嘆くのではなく、授かったものの稀少性を寿ごう。限定されていてもいいじゃない、ジェネラリストでなくスペシャリストを目指せば。自分に備わっているお宝を、磨こう。
私は一生懸命サッカーをしている小僧を見ているだけで、胸が熱くなる。
地味なプレーでも、ベンチで声援を送っているのでも、ただそこに生きているだけで、不遜ながら長友や岡崎や内田よりもずっと、私を励ます。
成果や結果より、彼と一緒に過ごす時間にこそ価値がある。
・・・って、最近は「試合も見に来なくていいよ、おかあさん。大会だけでいいから」と言われてちょっとさみしいんだけどさ。こっそり、木の影に佇むか。
そりゃ、怖いか。
いよいよ小学五年生。難しいシーズン、突入。どんな事件があるか、おかあさんは刮目して待つよ!
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