小僧が上機嫌で帰ってきた。
「国語が100点だったんだ!」
しかし、それだけではなさそうなのだ。どうしたんだ、へへいベイベー。
「んー、どうしようかな。……交換ノートをね……んー、やっぱ恥ずかしいな……交換ノートをー、アタックしてぇー、OKもらったんだーっっっ! あー、言っちゃったああああ」
そりゃ、おめでとう。身をよじるほどうれしい気持ちはよくわかる。
で、お相手は誰?
「それば言えない」
あとはどんなに促しても、絶対に口をわらないのだった。
誰が好き? と聞くと、即座に「あべちん(仮名)」とクラス一頭のいい男子の名前をあげていた小僧。あべちんの近くの席だったと、それはもう今日みたいに嬉しそうに帰ってきたことがあった。困ったことはあべちんに相談すればすべて解決するらしい。確かにお話ししてみるとあべちんはしっかりしていることこの上なく、娘を嫁がせたいと思うほど立派な四年生なのだ。
俊足のシュガちゃん(仮名)や将来のミスタープロ野球、タカハシ(仮名)、一緒にがんばれベアーズをやってるバスケのウミ(仮名)も、小僧が愛してやまないキャラで、私は小僧による彼らの自慢……なぜか自分の延長みたいに行動を自慢するのね……を聞いているので、そのめざましい活躍をよく知っている。
今日、誰がすごくいいことを言った。
今日、某がこんなことをして褒められた。
今日、あいつだけが、こんなことができた。
私は小僧のクラスの話を聴くのが大好きだ。いや、クラスだけじゃない。
「隣のクラスなら、絶対にアキハバラディーブ(仮名)!来年同じクラスになりたい!!」と一年の頃からやけに気の合う、気は優しくて力持ち、公平な精神の男子もいる。そういえば、クラスを超えて、よく一緒に遊んでいるのだった。
うちに遊びに来たときに、
「アキバ、俺の活躍ビデオ見る?」
と小僧が言うと、
「うわっ、見せて見せて」
と言ってくれて、まじまじ鑑賞したあとに、
「うわーまじすげぇなあ。もう一回見せてよ」
などと超嬉しいことを言ってくれるような、友情に篤い漢である。
アキバは自信があるのだ。そして、小僧を愛してくれているのだ。
小僧は小僧で、アキバのGKとしての根性が世界一だといつも私に報告しているから、互いに尊敬し、それぞれ自信を持っている部分があってよかったねと思う。
お笑いコンビを組んでいるモーリー(仮名)ともネタ合わせが真剣で、いつご披露があるのかわからないまま時は流れているが、モーリー母に言わせるとダメ出ししてもちっともくじけないらしいから、まあいいのかと思う。
とりあえず、東京ダイナマイトのネタ、ラストクリスマスの替え歌♪ラストクリスマス 寒いね ホッカイロがほしいね 鍋食べたいね お母さんに逢いたい……という、オリジナルを誰も知らない母恋唄が、局所的に大流行しているらしいことは聞いた。
模倣から始まるわけね。
人数の少ない都心の学校で、まあ実に楽しい毎日を送っているんだなと思う。
ギャングエイジとは徒党を組んでそれぞれの自我がグループの価値観になり、影響しあって集団を形成していく発達段階をさすわけだが、小僧の周りにはギャングらしいギャングがいないので、必然的に「なんかとってもまろやかな、いい子たちの会」になっている。
まあこんなにいい子たちなら、互いに好き好き大好きってのも理解できるし、このまま中学までつるんで遊んで、あいつは最高だとか、こいつは凄いぜ、かっこいいんだぜとかなんとか、そうやって過ごしていくのかと思っていた。
そこに女っ気はないままね。男子の集団だから。
ところが、女子、キターッッッッッ。
な、わけで。
そのOKしてくださった奇特なお嬢様が誰だかわからないけど、四年生は誰もが自分の子みたいなもんだから、それが誰でもうれしいなあ。ありがとう、小僧の勇気に応えてくれて。
まずは、「お友達から」始めてください。←当たり前だ。
私は義母と初対面の時、「こんな小僧と結婚してくれて、本当にありがとう」と言われて、すごく嬉しかったんだ。だから、ああいう姑になりたいと思うよ。がんばるよ。
……って、そりゃまだ早いかあ。あはは。
しっかし、そうかー。そういう時期かあ。ちょっと早いのかな。恋までは行かないのかもしれないな、まだあべちん愛を超えていないみたいだし。
それでも、とっても微笑ましいわ。
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