2010年11月19日

椎間板話003CT検査入院

初日
バカンス気分で出かけた検査入院の初日は、いきなりパジャマに着替えて、あと、なあああああああんにもすることがないんです。
外は銀杏並木が美しい、よく晴れた初冬。
「ちょっと外出しちゃだめですか?」と聞いたら、やんわりと
「病棟内は自由ですよ〜。でも、明日検査はがんばらなきゃいけないので、みなさん検査前にはゆっくりされてますよ」
と言われる。優しい口調だけど、笑ってない、目が笑ってないよ。
じゃ日頃の疲れをとっておきましょうかね。と、シャワー室と病棟の探検と、レストランと売店、行けるところには全部出かけて、あとはベッドでひたすら本を読む。
おうちだとあんなにすぐに寝てしまうのに、この無尽蔵な時間にわくわくしてしまって、ちっとも眠れないの。
やるべきことは、検温と血圧と食事と排尿回数のチェックだけ。
あとは上げ膳据え膳。シャワーも浴びて、のりのついたパジャマ、洗いたてのシーツ。
うれしさのあまり大興奮して発熱しちゃったのはご愛嬌として、入院の友として最強のi padをいじり倒し、「ご褒美。この入院はご褒美だきっと!」と堪能する。
ただし明日、朝ごはん抜き、昼延食と書かれているのが、ちょっと不穏だわ。
よーし、検査終わったらプリンだ、プリン食べようと、決意して12時前に眠る。

二日目検査当日
乾燥でお肌がカサカサ粉を吹いた。こんなこともあろうかと、韓国のフェイスパックを持参しているのだ、ぬかりはない。今日の夜はエステ気分で眠るのだ。
と、午前中は断食断水以外、バカンス気分が続いていたのですが、この後、とんでもない目にあうのだった。
やたらと「がんばろう」「がんばろう」言われてたよね、そういえばね。回診の時も、優しい看護師さんからもね。その意味が、やっとわかったんだった。
今回の検査は造影剤を用いてのCT画像の撮影。
これでくまなく見ることによって、神経の圧迫箇所と、今後の可能性がわかるらしい。
「ちょっとねー、穴あけて管いれますよ。大丈夫、麻酔打ちますから痛くないからね。脊髄に造影剤入れるので圧力が変わってね、まれに頭痛がしたり気持ち悪くなるかもしれないけど、心配要らないから。ちょっとつらいけど、がんばってね」
という説明を直前に受けて、もうちょっと細かく説明してくれてもいいんじゃないかなあと少し不満に思いつつも、整形外科でただでさえスローな動きの患者のフォローのため、看護師さんもドクターも、みんな早回しのフィルムみたいに動き回っているところで、なかなか勇気が出ませんわ。
で、ipadさんに聞く。
今の時代は便利。
ふむふむ、まれに副作用。頭痛、吐き気、悪寒、嘔吐、せき、くしゃみ、じんましん、かゆみ。こういうことを知っているのと知らないのとでは、知っている方が副作用が出にくい。なるほどね。
で、背中が丸あきになる検査着に着替えて、点滴抱えながら、処置室へ。
まず背中の背骨をよくよく消毒して、注射を打つんですが、これが怖くてどうも逃げてしまう。
あれ。これ、脊椎注射だよね?そうか、脊髄に造影剤を入れるんだったよ。
それからはもう何も感じない。背骨を何かが這う感じがして、このまま一時間待てばいいのね?楽勝。
なんか音楽とか聴かせてくれればいいのに。ふふふん♪などと思いながら、何かが流し込まれるのを感じていたら、
突然!
この世の者とは思えない、治療中の虫歯の謀反が。同時に左目の奥が波動砲発進。左のこめかみがきりきり痛い。いつも痛い肩と背中と腕が焼けるほど痛い。同時に吐き気に襲われて、私は一気に病人になった。
たかがヨードという異物が入っただけでこれなんだから、抗癌剤だの病気や怪我で手術だのといったら、もう、そりゃあ大変なんだろうな。タナボタで見つかった甲状腺の腫瘍は楽観しているが、これも即座に調べに行こう。歯は治療中だからこの程度なのだ、治療していなかったら大変なことになっていたに違いない、ううう、久しぶりだな偏頭痛の諸君!と、頭の中のおしゃべりがかしましい!!助けてくれ。
目を開けると目が回る。二日酔いとか車酔いとかみたいな、じりじり続くタイプの頭痛と吐き気だ。でも、吐けもしない、何も食べていないから。
冷やしタオルをおでこにあてて、枕をはずし、足を高く上げて、頚椎に造影剤を流し込む。造影剤がなくたって、頭が痛くなるわ、こんなコトしてたら。
待つこと一時間ちょっと。
ストレッチャーで運ばれるけど、この重力の変化がまた「くらっ、おえっ」とくる。
で、レントゲン撮って、CT撮って、やっと頭に枕おいてそのまままた病室に運ばれて……多分その間、30分ぐらいなんだけど、病室のベッドに運ばれて気持ちは楽になったけど、まだ痛みも吐き気もとれない。
眠れたらいいんだけど、本当に痛い時って眠れないんだよね。
水を飲んで、とにかく出して!と言われたけど、そんな事前説明聞いていない私は、ペットボトルさえ買いおいてないし。水道水が美味しかったよ。ビバ、東京水道水。と、思ったね。
とにかくうずくまっていよう。
もう終わったんだ。終わったんだ。
「鈴木さーん、お昼どうします?」
と、声をかけられたけど、「無理」と断って……いやまて、出さなきゃいけないってことは食べなきゃだめなんじゃない?と思い、何か酸っぱいものなら食べれるかもって、つわりか?
メニューだけ聞かせて、とナースコールした私は馬鹿者です。
クリームシチューと、ゴーヤチャンプルーと……やめて。やっぱり無理、と思ったら「サラダ」と続く。酸っぱいドレッシング、ドレッシングを飲みたい。と思って、食事を持ってきてもらう。
しばらくぐったりした後、吐きそうになりながらサラダだけ手をつけた。
「食べ物は腹に入れた。これで眠ればよし」
……つくづく、自分は野生だと思う。絶対にすぐに元に戻る、と言い聞かせて眼を閉じる。
激しい自分の動悸がうるさいけど、眠れ!そう決めたんだから寝ろ!と強制終了。
激しい尿意で目覚めて、夕飯を食べる頃も、まだフラフラでゲロゲロ。ここしばらくでこんなに体長不良って久しぶりだ、そうだった、こういうのをもって体調不良というのだ。私が使う体調不良…なんて、コンビニの前で座り込んで缶コーヒー飲んでる程度の生やさしい不良だったわ。
ずいぶん時間はかかったけど、ちゃんと夕飯を食べ、とにかく水分を嫌ってほど飲んで出しまくり、夜は鎮痛剤を飲んで、気絶するように寝た。
プリンもパックも、考えもせずにね。

三日目の朝。
朝方、足にじんましん。でも体温も血圧も正常だし、やがて肌の色も戻りました。
気合いだね。要は、気合。
シーツに血が!って、多分昨日の穿刺のせいでしょう。
気持ち悪さは続いているけど頭痛は我慢できる程度。腰が痛くて力が入らないけど、検査してるんだから当然だと思い直して。
何がなんでも退院する!と言い張り、様子を見ながら出所しました。
空は良く晴れていて、気持ちいい散歩でした。

検査オーダーのための病名は、頚椎症性脊髄症、ってことになってました。
手術になると、ちょっと厄介そうだなあと思いながら、腰と首が痛いのでヨタヨタ帰りました。
家での昼寝は爆睡で、すっかり元気になって、小僧のサッカーのお迎えに駅まで車出し。
前日は雨の中、一人で電車と自転車でスクールに往復し、風邪ひきそうになっていた小僧です。
で、子どもたちがやたらとやさしく、やたらとハグしてくれて、母親冥利につきるなあ、と。
あんなにつらかったはずなのに、
「たまに旅行するのはいいもんねぇ」
なんて思いながら、床につきました。

2010年11月19日 17:24