2010年09月12日

小僧のキーグロ

「これ…福助くんのキーパーグローブじゃないかしら?」
と、記名も薄れた小汚いキーグロをお届けくださった方がいる。
それはミズノのキーグロで、去年の夏、福助が合宿でMVPに「ゴッドハンド賞」をとり、そのご褒美に買ったものだった。

小僧がほしがるサッカーグッズは常に話題のプレーヤーの最新のものばかりで、そんなものを買い与える経済的余裕はないので、我が家では基本ノンブランドの必要最小限のものしか与えていない。
「欲しかったら足で稼ぎな」
小僧は優勝して、あるいはMVPをとって、クリスチャーノロナウドのレプリカユニ、本田選手とおそろいのスパイク、同じくトレシュなどを手に入れてきた。靴は大事なので小さくなればすぐに買い換えるが、そういう時には3000円を超えない予算限定になる。

冬、ゴッドハンド賞のキーグロをなくして、小僧は失意のどん底だった。
狂ったように探したが、それはみつからなかった。
サッカー選手としてグッズをなくすのは最低だ、ペナルティーとして、二度とキーグロは買わない。君はフィールドプレーヤーなのだし、必要ない。自分のお小遣いを貯めて買いなさい、と申し渡していた。
優勝のご褒美にどうしてもキーグロが欲しいと言ったのは、今年の春だった。
いかに必要か、ないと不便かを訴え、シューズもボールも今は足りているから、どうしてもキーグロにしてほしいというのだった。プーマを握り締めていたが、私が首を縦に振らなかったら、一番安いノンブランドの子ども用を持ってきて、
「これなら、どうかな」
交渉成立。小僧はそのキーグロをボロボロになっても大切にしていた。普通ならそろそろ買い替えなんだろうけれど、なくした以上二度と買えない。しかも、今、小僧はボールが第一希望なのだ。こんなにたくさんあってなぜ?とも思うのだが、確かにそのどれも皮がすり減っていて痛々しい。アスファルトの上で蹴り続けると、こういうボールになるんだな。
この前のフットサル大会で優勝しているので、近くボールを買いに行くことになっていた。でも、親としては小さすぎる、そしてボロボロすぎるキーグロに心を痛めてもいたのだ。

そこに戻ってきたミズノである。
こんなこともあるんだなあ。ありがたい事だなと思って受け取る。
発見場所を聞いて、探したけれどみつけられなかったのは不可抗力だったとわかった。次に優勝したらプーマもありかもな。

その日の夕方、ちょっと大きな小学生の大会への、選抜選手が発表になった。
なんと、小僧はGKとして帯同を許されていた。
偶然にしてはちょっと出来すぎなぐらいだ。
サッカーの神様は、粋ないたずらをするね。

2010年09月12日 13:20