「カッパはどこの動物園で見ることができる?」
と言ったのは、まだ低学年だった頃の娘ちゃんだった。
ラッコが実在なら、カッパも実在だろうというのは、わからないでもないが、どうも娘ちゃんは、頭の中にお花畑が広がっている節がある。
幼稚園の入園審査で、イラストの鶴が理解できず、さらに絵本落語の鶴を聴いたりして、いよいよそんな鳥は架空のものに違いないと思い込んでいたという、「鈴木さんちのとっておき逸話」がある。
そんなわけで、昨日帰宅した娘ちゃんが興奮していたのは、
「鶴、鶴見た。本物!鶴。首、なげーの。足、なげーの」
ということであった。
女子中学生よ、それでいいのか。
っていうか、せっかくの日曜日に、井の頭動物園に行く青春は、健全すぎやしないか。
しかし、地元動物園をデートの場所に選ぶ男子は、なかなかの策士だと思う。
動物園に誘われて、行くよと返事をする女は、自分にそこそこ好意を寄せているか、生物学に興味があるかのどちらかで、ここで軽く自分への評価がわかる。
だから、それ以上に踏み込まずによい関係を築いていけばいい。事前に無駄な告白や、付き合う確認なしに、第一関門クリアかどうかが明確にわかる。
バレンタインデーの後に誘っているのも絶妙。気をつかわせない。そして、チョコを誰かにあげた?なんて話題で、さらに踏み込んだ確認もできる。
動物園なら、まず誰かに会うこともない。地元だからお金もかからない。それでいて、適度に心和み、ちょっと予習しておけば、万一のときの話題にも困らないのだ。
そして、親の覚えもめでたい。動物園に行くような子は、親から愛され、子供時分にちゃんと動物園に連れて行ってもらった子であろう。はい、いってらっしゃい。
……相方と二人で、策士(←仮名決定)、やるなあ!と言い合った。
うちのJCは女の子っぽさに欠けるせいか、とても気軽にデートに誘われる。小学生の延長で、気安く一緒に遊んでくるねーってな感じで出かけていき、どんよりとした空気で帰宅するのが常だった。
いわく、話題が途切れて、つまらなかった。
電車が長くて、つまらなかった。
目的地が、つまらなかった。
告られそうで、面倒くさかかった。
こっちばかりが話し続けることになり、疲れた。
なんか勘違いして束縛しようとするので、怖かった。
……ところが、昨日の策士君(仮名)は、全く彼女を飽きさせなかったという。
話題が豊富で、すっごく楽しかった!らしい。
動物のことをよく知っているだけで博学に見えるだろうし、共通の知り合いのネタは尽きないし。
で、付き合うの?と聞いたら、全然そんなんじゃないから気楽なんだよー。一緒にいて楽なんだもん。友だちだよ、いい友達! 親友になりたい。と。
私の相方は、独身時代、確かずーっと私の親友だったな。
今度はどこに行くんだろう。私たちはずっと飲みにいくばっかりだったが。娘ちゃんにどこに行きたい?と聞くと「寄席」という以外、ノーアイディアな人だから、また、策士君(仮名)が提案してくれるのだろう。中学生らしく視野が広がるかなあ。楽しみだなあ。
超美形の孫はあきらめる。ま、娘ちゃんが笑っているなら、それが一番。
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