「でしょう、だから言ったでしょ、キョウタロウはすごいんだって」
と、隣のご婦人が、ご同行されていたご婦人に対して、鼻を膨らませる。
「寄席って、いいでしょう!」
と、まるでお席亭のようだ。
ふーんだ。柳家喬太郎は、あなた一人のきょんきょんじゃないわよ!と思う。
うちの娘だって、大ファンよ。寄席には師匠の本を持っていき、生徒手帳にはパソコンデータの写真が挟まってるのよ! 嵐なんかより、きょんきょん持ち歩くJC=女子中学生がいるのよ。と、なんだか子ども帰りして、張り合いたい気持ちもあったのだが、噺に泣かされて目の周りが真っ黒だから、ご婦人は捨て置き、そそくさと演芸場を後にした。
それまで散々笑わせられて、脳みそはやわやわ。ひと撫でで、涙スイッチONになるのも道理で、またしてもやられましたと思う。
「鬼背参り」……ひどい男なのに慕い続け、鬼と化すまで惚れきった女心、というところでもう、決壊。ひどい、いやもうあんまりな扱いだとわかっていても、だって好きなんだもん!それでも好きなんだもん!で押し通す一途な青春の蹉跌を思い出して、切なかった。
私の場合は、鬼にならなくてよかったですけど。
もう、あんな恋はできない。喬太郎師匠に抱く愛は、またちょっと違う。
しかし、うちのJCのきょんきょん師匠に対する恋心が、「それ」であっても困る気がする。
女の子を一人育てるってコトは、もうひとつの人生を送る……もちろん、自分のよりはうんと薄いけど……ってことなんだなあと、最近思う。
でも、娘ちゃんは私のように血液が沸騰するタイプではない、物理的にも比ゆ的にも、低体温の人なんだけどさ。
入試の日に行った喬太郎、演目は「ハワイの雪」。娘ちゃん、三回目。ヒット率、高し。
「次は違うのがいいなあ」
本日、池袋演芸場、柳家喬太郎師匠の主席、最終日でございます。あ、始まってるね。
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