季節性の喘息が抜けない。
コンコン。
実はキツネでも憑いてるのかしら。
毎週水曜日は小僧のサッカースクールである。
暑かろうが寒かろうが雨だろうが風だろうが、台風の日だって、有力選手の保護者は吹きさらしのグランドでわが子を見守っている。
最初はものめずらしさもあったし、情報交換も楽しかったが、一度、腰痛でグランドのベンチに座り続けることが困難だと思ったとき、まずは古い書店を見つけて本を一冊買い、世間話をしながら評判を聞いて、ご近所の整体に飛び込んだ。
電気を当てて、軽くコリをほぐし、あまりにつらいときには別料金で鍼も打ってもらうのだが、さすがにご近所で評判になっているだけあって、これが最近の毎週のお楽しみである。550円で至福の30分、それから練習試合の見学と、サッカーママ友達とのおしゃべり(もはや情報交換する情報も……)。
ナイスプレーだけを褒める。
気づくと、自分の子ではない子の絶妙プレイも拍手しちゃったりしている。
ほぐれた体だと、キンキン尖った声は出ないんだなあと実感する。施術者のやさしいてのひらのぬくもりが、心までほぐしてくれるのかもしれない。550円、いいお金の使い方だなあと自画自賛する。
水曜日は、心なしかやさしい私なのである。
昨日は車で出かけてみた。
日中は太陽で方角がわかるから、看板でどこにでもいける自信があるのだが、夜になるとどうもダメだ。ほぐされて失くした緊張感では、即座に看板を読み取ることも、間違えたらUターンなどの判断も、遅くなる。その上、渋滞。
小僧に方位磁石を読ませ、月はどっちに出ているか確認しながら迷走する。
最初は練習で疲れ、空腹でご機嫌も斜めだった小僧だが、自分のナビこそが命綱だとわかると、にわかに張り切りだし、方位磁石の読み方も、向かう方向も、完璧に。
もともと原始時代なら、群れ一番の狩人になりそうなタイプの男である。駿足自慢で、抜群の記憶力、そのうえ策士だ。ナビには最適だ。
「冒険だね、おかあさん」
「この冒険の終わりに、何を食べようか」
「ラーメンがいいな」
「よし、じゃあ、とびきりおいしいラーメンを目指して!」
夜の運転はキライだったが、励まし上手な小僧ナビ搭載のドライブは、なかなか楽しい。
一緒に食べたラーメンは、今まで食べたことがないほど、おいしかった。
今朝、小僧は録画していたイナズマイレブンを見るために6時半に起床し、自分でごはんにシャケフレークをかけて丼飯を食べ、茶碗をきれいに洗って片づけていた。
七時半に私を起こしに来たときには、歯磨きまで終了。一通り話したいことを話して、自分の部屋を整理し、洗濯物を洗濯機前に置いて、八時前に出かけていった。
どしたの? 突然大人になっちゃったの? 抱きしめる福助は、昨日と変わらない背丈、変わらないガリガリぶりなのに。
トラブルは、人を大人にするのかもしれない。
私はきのうの整体が台無しになるほど、今朝は咳き込みが止まらないのだが、きっとこのトラブルにも何か意味があるのだろうと思った。
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