中学生活が始まって一週間、本日、寝坊。
おお、P子らしくなってきた。
さすがに限界かというところまで待って部屋をノックしたら、魔窟から阿鼻叫喚が聞こえた。
お弁当は夜のうちに、晩御飯からおいしそうなところを先に頂いて、詰めてしまう。
朝は卵焼きとウィンナーとおにぎりだけでOKという、超手抜き弁当の作り方を指導していたから、余裕はあるのだが、パニックのP子はわたわたしているだけで、さすがに気が回りそうにない。
寝坊したとき対策で、冷凍食品もふんだんに用意してある。
ご飯は握らず、別のお弁当箱に入れて、ふりかけと梅干。
おにぎりよりも少なめになるため、デザートにバームクーヘン。
そんなときのためのクッキーや小袋に入ったスナック、栄養補助ゼリー、野菜ジュースも揃っている。
ほらね、5分で整えられるから大丈夫、と、お弁当バッグに巨大なお弁当をつめてみせた。
泣きながら朝のコーンフレークをわしわしかっこんで、泣きべそを洗顔し、ばたばたと出かけていったが、はて。
これはなんだろう。
この、ダイニングテーブルに置かれた、ピンクの巨大なお弁当バッグは。
「忘れたのーっっっ。お弁当を忘れたって、今気づいた」
と、公衆電話から電話があった。時間的に見ると、学校の電話だな。
「で、どうするの?」
「念のための五百円玉があるので、これで食堂で食べていい?」
「もちろん。よく自分で解決策を思いついたね。了解」
「それで……あの、そっちのお弁当はどうするの?」
と気になっているようなので、
「お母さんがお昼に食べるよー」
と言ったら
「よかった!じゃあねー」
と威勢よく電話が切れた。しかし、こんなメガ弁当、相方も私も、とても食べきれない……。
彼氏の好きなものを聞いたら「おにぎり」だという話で、P子はシンク中を米粒だらけにして毎朝おにぎりを握っている。泥団子もまともに作れなかった娘ちゃんの成長がまぶしい。
ありがとう、彼氏君。君の好きなものが、クッキーとかケーキでなくてよかった。お菓子作りは、あまりに高すぎるハードルだ。
お料理一年生の娘ちゃんは、「P子パン」なる、娘ちゃん専用専用卵焼きフライパンを入学祝いに買い与えられたので、卵焼き作りにも余念がない。だしの効いただし巻き卵が好きなので、そういうレシピで教えたのに、切れ端を食べる福助の受けがよいのは「甘ーい卵焼き」だったら、なんと、少しずつ甘い卵焼きに変化してきた。
お料理は、食べてくれる人のために作るものなんだなあと、こんなところで再認識。
また、福助が褒め上手で。
つか、私が料理下手なので、何を食べてもうまいのだろうし、朝からいろいろなおかずがあることがうれしいのだろう。基本、納豆と味噌汁だけの朝ごはんだからね、うち。
「ゴージャス!」「うわあ、今日もごちそうだー」「この卵焼き、最高。ゴールデン!」などと言いながら、ご飯をがつがつ、食べていく。
そんなこんなで、すぐに米びつが空っぽになる。
ああ、今日もぴーかん、いい天気だ。新緑もまぶしく、絶好の仕事日和だ。
さあ、父ちゃん、がんばっとくれ。……地下室にこもって。
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