2008年09月11日

ジャイアンのプレイスタイル

公園で小僧達がサッカーをしていたら、この辺では見かけない子二人が、仲間に入れて〜と入ってきた。
他の子は人見知りするが、うちの小僧はサッカーする者を拒まない。小僧とその子たち二人がチームになり、他の子多数の二チームでゲームが始まった。
ボール一個で友達になれる、なんと素晴らしいことよ。と思っていたら、この子たちがまた大変にお上手な子で、なんと頼もしいことよ。と思っていたら、この子たちがだんだん二人だけでサッカーをやり始めて、なんとうまいことよ。と思っていたら、そのうちに｢お前、触るな」が始まり、福助にキーパーを命じる始末。容赦なく相手にぶつけて、強いあたりでなぎ倒して、ゲームはしばしば中断されることになり、結局いやな空気だけ残して、ゲームはあっという間に終了してしまった。
圧勝して二人は大喜びだが、なんとなくやり場のない気分の福助がいた。

実力のある子は王様になりがちだと、改めて知る。
どこにでも、こういうジャイアンタイプはいるのだろう。
たまたま、小僧が所属するチームにもスクールにも、今のところいないだけで、対戦相手などでもよく見かけるタイプだ。そして、そういう子がいるチームは例外なく強い。
小僧が所属するチームは、チームワークがよくて、今のところよく勝つ。
仲間を責めようものなら、徹底的にコーチから叱られる。シュートをミスっても「なんだよー、決めろよ！」というかわりに「次は入るぜ！いいシュートだった」という雰囲気だ。
やたらと和気あいあいとしていて、試合中も楽しそう。
ゴール際につよい、多少勝ち気なフォワードもいるのだが、それがゴール前で騒いでいると、｢お前、ちょっとうるさいよ」とみんなにスポイルされるぐらい、穏やかな集団である。守れ、何番マーク、ここはあけて、サイドひらけよ、ぐらいの声は仲間同士でかかるけれど、なでしこジャパンほどの気迫が一般少年団だとすると、うちは反町ジャパンほども、気迫がないのである。試合を待つ間は鬼ごっことかお砂遊びなどをしていて、大丈夫かおまいら。と、不安になることもしばしばだ、そういうこともあり、四年生の時にはセレクションも念頭に置くか…と思っていた。
でも、ジャイアンみたいな子が牛耳る、勝ちに行くチームに入るのはしんどそうだなあと、初めてジャイアンのプレイスタイルを目の当たりにして、思う。
サッカーの時の小僧の性格は十分負けず嫌いだと思うし、かなり黒い部分も豊富なのだが、オレがオレがではない、クールなフォアザチームに徹底する姿勢が私は大好きだ。そのプレイスタイルはずっとキープして欲しいと思う。でも、ジャイアンのようにオレが！という気迫がないと、セレクションで合格しても、上には進めないようにも思う。
ジャイアンそのままだとＦＷでしか使えないから、研磨されて研磨されて、ＭＦやＤＦになっていくときく。元は、みんな勝気なフォワードだったと。それが上に行くことだとしたら、小僧にはその資質がない。

ゲームが終わって、サッカーの超うまいジャイアンと、サッカーの超うまいスネ夫と、のび太君面の福助三人を残して、他の子達は虫とりに出かけていった。
ゴールふたつ。
ボール一個。
選手三人。
一対一でも始めるのかなと思って遠巻きに見ていたら、福助をキーパーにして、二人でセットプレイの練習をしている。それはそれでよい練習だと思う。帰宅時間を知らせて、私は買い物に行き、戻ってきて驚いたのが、まだ福助がキーパーをしていたことだった。
｢帰るけど……」
と声をかけると福助が救われたという顔をして、こっちに走ってくる。私と二人でゴールを片付けながら、
「ずっとキーパーなんて珍しいね。キーパーに目覚めたの？」
と聞いたら
「ちがうよ。あいつら、オレもシュートしたいっていっても、ダメって言うんだ」
「じゃあ、反対のところで練習すればよかったじゃない」
「キーパーを辞めるのもダメだって」
「あんたのことは、あんたが決める。ダメなんてことは、誰かが決めることじゃないよ。なんだそれ！」
私は猛烈に腹を立てていた。なんたって、私自身がいにしえのジャイアンタイプである。
ジャイアンとスネオは福助のボールで遊んでいたので
「帰るから返して。あのさー、あんたたち、みんなで練習すればいいんじゃないの？自分たちばっかりやってて、楽しいの？」
と叱ってみた。すると、
「うるせーよ」
と言い残して、ジャイアン、走っていってしまった。スネオは、軽く一礼して、ジャイアンについていった。

どこから来た子なのか、いくつなのか、ここにずっと住んでいれば近隣のチームなのか、あるいは有名クラブの子なのか、知らない。
でも、なんだかショックだった。
サッカーって、自分の力を誇示する為だけにあるなら悲しい。
せっかくすごい才能をもっているジャイアンとスネオが、彼らよりうまい子に力でねじ伏せられない限り、多分あの態度が改まらないのが、悔しい。
彼らに圧倒的な差をつけてひれ伏せさせるどころか、ひれ伏してしまった福助がふがいない。
ジャイアンの母親は、彼がチームで王様でも、何も言わないのかな。あれだけ得点力を持っていれば、誰も何も言わないんだろうな。
スネオは一人でもエースになれる実力なのに、っていうかうちの少年団においでよとスカウトしたいほどの出来なのに、ジャイアンに雌伏してしまうのはなぜなのかな。
男子の階級闘争は必要悪だと思う。でも、黙って見逃せるほどの器量というか、基準が、まだもてない。
翻って、うちの小僧がチームで王様面していないか、のび太のくせに！と思われていないか、ドラえもん体型の母としては、よくよく反省してみるのだった。

少年サッカーも、いろいろ難しい。まだ低学年なのにな。

2008年09月11日 12:23