運動会が終わった。
ピアノの曲を聴いては耳をふさぎ、踊りを覚えることができず、「福助君の場所」と呼ばれたクロークで身を硬くして一人、石になっていた小僧の幼稚園年少時代を思い出していた。
困難はたくさんあればあるほど、味わいは深くなるなあ。
群舞ひとつでこんなに感動できる特権は、なかなかないと思う。
初めての運動会、練習では団体行動ができずに、園長に欠席を申し出た。
あのとき、
「任せてください。できなくてもいいんです、でもきっと、できると思いますから」
と担任の先生が言ってくださらなかったら、きっと今の福助はなかったと思う。
位置について、よーい、ドン。
ゴールでその名を呼び続ける姉と、担任の先生。
力強く担任の先生の胸に飛び込み、抱きしめてもらったあの瞬間がなければ、今日、また徒競走で力強く駆け、テープを切ることもなかったと思う。
あの瞬間の自信が、その後の福助を明らかに変えた。
だから、福助にとって、いや私にとって、徒競走は特別なものだ。
この先も、繰り返し、繰り返し、人生最初の師であったあの先生に、大事なことを教えてくれたあの幼稚園に、感謝する特別なものなのだ。
娘にとっては小学校最後の運動会。
運動神経のない彼女には彼女なりの喜びが……と思っていたら、ある競技で大金星をあげ、彼女にとってはもっとも思い出深い一日になった。
「応援、ありがとうございました」
彼女が帰宅後開口一番に発した言葉だ。
彼女を成長させてくれた小学校にも、感謝したい。
勝敗にはこだわらないという考え方がある。
でも、勝った喜びから変わること、負けた悔しさから学ぶことがある。
本気で取り組んだ者だけに与えられる涙がある。
うれし涙も悔し涙も、子ども達にとって大きな糧になるだろう。
たかが運動会、されど運動会だなあ。
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