2006年09月29日

強運

強運って、私のことだな。
ミセス強運。それは君が見た光、ボクが見た希望〜。あれ、そりゃ線香のCMか。

「ゆう子さん、すっごいがんばってんのに、福助もすごいがんばったのに、なんで」と絶句して、ぽろぽろ涙をこぼしたカブちゃんママ(仮名)。そのまま抱きしめられて、私は頭をイイコイイコされた。
他人のために、こんなに泣けるのかと驚くほど彼女は泣いて、私も抱きしめられたまま、ちょっとだけ泣いた。
「福助のためにいい選択ができるといいね」
と言って、20代の彼女は、もう一度私をぎっと抱きしめてくれた。
「情緒、調べてみた。速攻でPCで」
というママ友もいた。
ボランティアで知り合いがいるからと、福助が行くことになりそうなクラスに話をきけそうな母親がいないか、すぐさまあたってくれた人もいる。
「どんな結果でも、どこにいっても、私たち親子は福助が大好き」
とメールをくれたママ友もいる。普通の世間話のメールに、
「福助君は、サッカーがうまいという以外、特にかわったことがないけどな」
みたいな追伸をつけてくれた人もいる。
「情緒がどういうところか、ゆうこさんが情報を流してくれなければわからなかった。こうやっていつも情報をもらえるのがうれしい。いいところならいいよね」
といってくれたママ友もいれば、
「その前提でも福ちゃんには必要ないよ。福ちゃんがひっかかるなら、一体何人ひっかけなきゃならないの? もし断れないものなら、署名でもなんでもするよ」
と、意気盛んに言ってくれたママ友もいる。

迷いながら、それでも福助に一番いい選択を。多分それは情緒に行くことだと思うと、クラスに報告した。そのときのみんなのリアクションが、心にしみる。
涙ぐむのは、私がここにゴールを設定して走ってきたことを、みんなが知っているからだ。
普通に見えるようにどんなに努力しても、普通だけじゃどうしようもないという判定に、その無常観で私が落ち込んだことをわかってもらっているからだ。
いや、むしろ、みんなが一緒になって、福助の療育を分担してくれたからだ。
毎朝の声かけ、不可解な行動の子どもへの弁明。お預かりの時があるからと、自閉症基礎講座を尋ねてくれて、だから、多分男子の母親の大半は、自閉症の特徴をよく知っている。
そのうち福助が落ち着いて団体行動が取れるようになり、サッカークラブではちょっといい感じという話をすれば、我がことのように喜んでくれた。奇跡みたいな発達の成果は、この母達の肉弾戦、もとい、人海戦術にあったんじゃないかと、ホントにありがたく思った。

「ウエイトレスさんに、ケーキお願いしますって言ってきてくれる?」
と、昨日レストランで福助に頼んだら、
「うーん、ごめん、何言ってるか、わかんないや。トレスっていうのが、わかんないんだ」
とリアクションする、変わった子ではある。じゃ、ウェイはわかるのかよ、と家族で笑って、こいつのおかげで笑いが絶えないなあと思う。
食後のコーヒーを飲んでいたら、福助がくしゃみをひとつ。
「最後に、はくしょん、ひとつ、入りましたー」
と言われて、吹き出してしまった。天然は愉快だ。

情緒に行こうと心を決め、遠い学校にアポイントメントをとって見学を申し出たら、十一月まで会えないと言われた。
学校見学もなしに、入学するクラスを決めるのか……と、苦悩する。
そこに、区またぎで通級の情緒学級を持っているところは調べたかと、ママ友から聞かれた。
実は幼稚園では職員会議でその提案がなされ、検討してくださったのだと、担任の先生から伺った。しかしP子の転校や、福助の心構えを考えると、越境が果たして最善かは難しいのではないかとも話し合われたという。なので、強く提案はしないが、とりあえず連絡先だけは頂いたという状態だった。
同時に、園では、普段の福助に問題があると思えないので、必要であればどこにでも出て行って説明する準備があるから言ってくださいねと言われた。
「そうか……そんなことまで、ここの先生方は」
と、ママ友は朝から園門の前でいきなり涙ぐむ。
「ああんもう、自分の子どもじゃないのにぃ」
と、笑い泣きしたのち、
「11月まで世田谷の通級見学できないなら、せめて区がちがっても何をしているか、直接先生に聞いたらいいんじゃない?」
と言う。
彼女に背中を押されて話をしたところ、二つ返事だった。大急ぎで着替えて、自転車を立ちこぎですっとばす。校長先生は、厄介な問題を懇切丁寧に聞いてくださった後、
「もしこちらの方が近くて都合がいいのなら、こちらにいらっしゃい。区が違うことは何とでもなります。大歓迎ですよ。もう一度判定をうけなければならないでしょうが、様子を見てからというならそれもありだと思います。お姉ちゃんも一緒にというなら、喜んでお引き受けしますからね」
と言ってくださった。
そのうえ、すぐに通級の先生と連絡が取れるようにしてくださるというし、施設も見せてくださるという。
すごい人格者なんだもん、そこの校長ったら。惚れそうだったわ。

こうやって、たくさんの人の結びつきが、福助を支えてくれている。
こんなに愛されている福助なんだもの、人なつっこくなるのは当然だ。
頂いたご恩を、別の形で返せる日が、いつか来るんだろうか。
力がほしいと思う。何らかの形で、ちゃんとご恩返し出来る、パワーとエネルギーがほしい。
この強運を力に変えて、まだまだがんばらないと、と思う。

2006年09月29日 14:17
コメント

よかった。この数年U子ちゃんが福助のために一生懸命頑張ってきたことを、ちゃんとわかっている人がこんなにいる。よかった。

Posted by: hal : 2006年09月29日 23:38

みんなの暖かさに、感動した。泣いた。

Posted by: たま : 2006年09月30日 12:48

お久し振りです覚えておられるでしょうか?

>たくさんの人の結びつきが・・・そうですよね^^
私も今まで亜沙美を育てていて、そ思います。

亜沙美は、今迄、通所授産所に通所していましたが、今日から新しい事にチャレンジします。
良かったら、覗いてみて下さい☆

Posted by: amiaminohaha : 2006年10月01日 10:41

亜沙美ちゃんの活躍、ママの活躍、応援しています。

たまさん、halさん、ありがとう。
ホント、人に関してだけは、何というか資産家ですね、私。とんでもなく愛情埋蔵量の豊富な方達と一緒に過ごしています。幸せです。

同時に、学校に行くことで、こういうのがなくなるのかと思うと……。いや、きっとまた!!

Posted by: ゆう子 : 2006年10月01日 19:53
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