「福ちゃん、漢字が読み書き出来るって、本当?」
と、連休前のため特別にリーグ戦になったその日、大活躍で優勝し、気をよくしている福助に、ケンちゃんママが質問する。
「うん、書けるよ。豆乳のニュウとか、牛乳のニュウとか」
「へえ、スゴイ!! ……って、乳?! 即座に答える漢字が乳ってのは、さすが男の子ねぇ」
ケンちゃんママは笑いながら私に言う。彼女はクラス一の巨乳というか爆乳なのであり、まあそういうのには慣れっこだったんだと思うけど、一応私は、訂正しておく。
「いや、本人は豆乳の豆と、牛乳の牛、って言いたかったんだと思う」
ところで週末は、新潟から10年ぶりに友達がやってきた。
「五時半には帰ります」
と、あらかじめ宣告してしまったものだから、福助が五時15分を過ぎた段階ではらはらしている。
福助はそのあたり、ルール遵守の人なのだ。
で、とうとう五時半になったとき、おそらくは最大に丁寧な言葉を使ったつもりなんだと思う、
「この人は、一体、いつまでおじゃまするつもりですか?」
一同笑った後に、福助には「これはウケちゃったけど、間違いで、失礼な言葉なんだよ」と訂正。
こいつのこういうすっとんきょうなところは、そのまま残しておいた方が「笑い」としてはおいしいんだけどなあ。まあ、社会性を考えると、そうもいかないか。
翌日、友人の葬儀。
久しぶりに故郷に帰ったものの、あまりに違う都市になっていて、さらに連絡すべき友人がもうひとりもいないことに愕然とする。
泣き腫らしたノーメイクの目と、ふくれあがったこの体では、昔の彼氏にすれ違わないことを祈りながら駆け足で電車に乗るのが唯一帰郷した感覚。一応弟に電話をしてみたが、彼らの連休はすでに少年野球でめいっぱい忙しいのだった。
故郷にはいい思い出がない。
西武線所沢駅から乗り合わせた隣に座った巨漢(1.5人分)は、なぜ同行の後輩の女の子に席を譲らないんだろう。と、思う。いい思い出がなかったというより、いい男に巡り会えなかった街だった。
いい男だっていっぱいいるだろうに、私が所沢ですれ違う男はたいてい……。
巨漢はどっかりすわって、重そうな彼女の荷物すら預かろうとしない。有名私立大学修士課程在学中の漫画家であるその彼(無防備にそんなことを電車の中で語っちゃいけないよ、と言いたかった)は、大変好青年な口調だったが、所々に若さのにじむ見栄が入っていて、なんというか控えめな羽根の広げ方に、隣に座っているのが気恥ずかしくなった。
そんなに大きな声で周囲の人に漫画家の悲哀(ちょっと自慢混じり)なんか訴えないでくれよぉう、そんなにイヤならやめればいいじゃん!と思いながら、眠ってしまった。
夕方、家族がカラオケにいるというので合流。
「おかあさん、お葬式楽しかった?」
と福助に聞かれて、笑って泣いた。それから訂正しておいた。
飲み放題にして、がぶがぶ煽りながら、思い切り歌う。笑いながら歌っても、泣きながら歌っても、家族はやさしい。いい男もそばにいて、ああここが故郷なんだなあとしみじみ思う。
その後は記憶がなく、昨日は功名が辻も見ないで寝てしまった。
連休最後の今日は、だらだら過ごす予定。しかしメガネがみつからない。相方はスリッパが片方ない。福助よりもずっと問題があるのは、その親の方だよなあとちょっと思う。
でもまー、楽しいからいいか。
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