2006年02月21日

例の事件

園長に責任はないのかなあ。
どんなニュースを見ても、例の幼稚園の園長に対する批判はないけれど、うちの幼稚園だったら、考えられないことだ。雰囲気ヤバイのわかっていて、いじめの事実も掌握していて放置していたのだから、職務怠慢ではないか。嫌がる集団登園を強要し、容疑者のルール違反の苦情まで受けていて、やはり、何もしていない。その結末が園児の殺戮だったことに対する責任は感じていないのか。
失礼ながら、本当に保育の現場を知っていた方なのか。
追いつめられている母親の心に共鳴できる方だったとは、とうてい思えない。
うちの園長は先生方に混ざって園庭を走り回っている。だからひとりひとり、家庭の事情もよく知っている。
「この子は、この子自身の成長のために、一応専門機関で診断した方がいいかも……」と思う発達障害らしき子には、それを毎週ある教育相談の時にアドバイスしたりもする。中には「侮辱だ! 」と言ってやめてしまい、別の園でうちの幼稚園の悪口を吹聴している方もいると聞いたが、 その子どもに障害があるのは周知の事実で、その現実は、最初に指摘した人を逆恨みしても、残念ながら変わらない。
誤解されても、踏み込んでくる人がいる。決して放置しない。こうあるべし、と長年のキャリアで説いてみせるプロがいる。
経営を考えれば園バスが効率いいですよと勧められても、「親同士の顔が見えない」「それぞれ個々の事情を尊重できない」という信念を持って、園バスを導入しない。時代錯誤かも知れないし少々おせっかいなのかもしれないが、 そういう人が長である園にいるのが普通な私にとって、あの例の園長の記者会見が違和感に満ちていて、未だに苦い気分だけが残る。

どうしても父母会の会長さんという立場上、もしうちの園だったら……と想像してしまう。
私は、彼女自身の寂しさに寄り添えただろうか。
心開かない人の心に、どうやって優しさを持ち込めばよかったのだろう。
私自身、多分、コトを荒立てないために問題を園長に持ち込んで終わりにした気がする。
あるいは、異文化への興味で友達になりたいと志願したかも知れないが、外国人であろうがなかろうが、気が合う人を友達と呼ぶのであって、精神的に不安定で自らなじもうとしない人と、ずっと友達でいられたかどうかはわからない。

私には、フィリピン人の親友と呼べる人がいるのだが、彼女はとてつもなく優秀で「どこのご出身ですか?」「フィリピンのマニラです」「え、福島かどこかではなくて?! 」みたいな会話がなされるほど、流ちょうな日本語を話す。英語もタガログ語も中国語もどんと来いで、もちろん漢字の読み書きも問題ない。日本の大学院で日本人と恋に落ち、卒業後こっちで結婚して、今は論文の翻訳を生業にしている。
だから彼女を見ている限り、今ひとつマイノリティーの差別といってもピンと来なかった。私たちには同じ年回りの娘達がいて、そんな話題よりも子どもの話で時を忘れるからだ。
それでも彼女がもしアメリカ国籍なら、同じ仕事で倍の給与がもらえるだろうといったことがある。白人だったら、もっと楽に仕事がとれるだろうといったこともあった。何気なく、お姑さんに、名前には漢字を当てるように勧められたこともあったという話は、結構強烈で、はっきり覚えている。

マイノリティーの苦悩ーー。私には、その程度の認識だった。

しかし、もう一人、フィリピン人のママ友がいて、たまたま昨日遊びに行ったときに聞いた話が壮絶だったので、長くなるが、書く。
彼女自身のところは夫婦は円満なのだが、お姑さんと折り合いが悪い。ケンカして、「そんなにイヤなら出て行け」と言われたのをきっかけに家を飛び出し、現在は夫の妻問婚で安泰に暮らしている。
「おばーちゃんは、私のコト、キライね。私のホントの名前、知らない。もし私、事故に遭う、きっとわからないね」
と、彼女は屈託なく笑い飛ばした。
「でもねー、私の友達のフィリピン人、病気になった子、いるよ。ご主人にいろいろされて、おかしくなっちゃった」
夫婦間のDVだ。
「ばかやろ、って怒鳴る。日本の男はみんなそうかときかれた。普通は違うよ?  (殴る)これ、する。フィリピンでは、しない。日本も、ダメね?」
彼女の話す日本語はたどたどしくて愛らしい。美人だし、たいそう愛されている結果、ご主人の過保護で、彼女は日本語がほとんど読めないのだが、それはそれで武器のような気がする。
もっとも彼女の英語は完璧。彼女の父親はPTA会長を務めるような地元の名士であり、彼女も学校行事には必ず参加している、ポジティブな人である。
「結婚したらねフィリピン人、簡単に離婚できる、でも帰れない。お金、ないから。ダンナさん、お金くれない。国に帰っても、仕事ない。子どもは命だから、捨てられない。でもフィリピンでは育てられないから、日本出られないの。友達もね、結局、夜の仕事してるんだよ」
おかしくなりかかったその友達は、最初、誰にも相談できなかったらしい。
そして、とにかく日本人と、日本がイヤになったという。テレビを見ていると日本語がまとわりついてくる、それがイヤで、何もかも脱ぎ捨て、ハダカで飛び出してしまいそうなほど憔悴した。そんなある日、離婚を決意した。異国で、ああ気が狂うぞと思う瞬間は、海外に長く暮らしてみないと理解しにくい。でも、ときどき外国語がうざったくなる感じは、ちょっとばかり理解できたので、私も話を聞いていて胸が痛んだ。
来日当時、彼女が頼りにしていたその友人というのは、日本と日本人が大好きで、こんな親切な国はないと絶賛していた。しかし、最後には、
「私は人間だよ。日本人じゃないけど、人間だよ!  もう我慢できないよ」
と叫んで、離婚に踏み切ったと言うから、哀しい話だ。
慰謝料ももらわず。入院も通院も、できるはずもなく。夢やぶれて、東京砂漠。
それを臨場感溢れるフィリピン訛りの日本語でとつとつと語られるとアナタ、私はただそのママ友の家にお茶を飲みに行っただけのつもりだったのに、本当に泣けて泣けて困った。
「私、今はいい。別々に住んでる、でも、今はダイジョブね。でももし私が困ったら、やっぱり、助けて、どこに言えばいいかわからない」
と、彼女がちょっとしんみりいうので、
「私を頼りなさいって!!  クラスのママ友だって、みんな味方よ」
と安請け合いしてみた。彼女とは気が合うから友達でいられるが、当然、私には気の違ってしまった彼女の友達まで、請け負うことはできない。

話は違って、日本人だが、別のママ友達の学生時代の友人に、DVを受けていた妻がいた。
結局彼女は子連れでシェルターに逃げ、無事離婚も成立したそうだが、未だにトラウマで悩んでいるという話から、
「何かカウンセリングの施設を知らない?」
と相談を受けて、調べてみたことがある。
それは案外少なく、意に添えない調査結果だったのだが、今回のコトがあってもう一度、今度はフィリピンママ友の友達のためにも、何か力になれないかと調べてみた。
外国人妻、特にアジア系の外国人妻の駆け込み寺や法律相談所がザクザク出てきた。それを必要としている人がこんなにもいるという現実に、打ちのめされる。
この比率で、外国人妻が虐げられていないことを願った。

園児殺害事件の中国人容疑者と、フィリピン人のママ友から聞いた話に、何ら関係はない。
けれど、容疑者は、異国で精神を病むほどに追いつめられていたという記事に、また、タイムリーなママ友の話だったから、勝手に感傷的になってしまった。

事件はいつだって痛ましい。
でも祈ることしかできないというのは、なんか違う気がする。
クリスチャンにあるまじき発言だが、何か具体的に行動できるはずだという気がする。
例の園長みたいな、他人事を決め込む関係者を見て無性に腹が立つのは、きっと行動すべきだと考えているからだ。
だが、何ができる?
一体、私に何ができるのか。

2006年02月21日 20:07
コメント

いじめの事実在ったのでしょうか

Posted by: miki : 2006年02月22日 11:06

こういった時事ネタを書き込み、批判するときは
事実関係をハッキリしたほうが良いのではないでしょうか?
集団登園強要したでしょうか?
声はかけたが一度拒否し、その後自ら申し出たとニュースで聞きました。これすら事実か分かりませんが
聞きかじった話だけで他人を批判するのはどうかと思います。
ご自身のブログですが公の場であると思うのです。

結局、今回の悲しい事件は犯罪者が悪いのは当然ですが、周りの人間を攻めてよいものでしょうか?
地域、お母さん方の交流のために集団登園を行なっている保育園。今回は裏目に出ただけだと思います。
容疑者の相方、地域の人々、保育園の先生方、
誰にでも責任はあるのでは?
いつも楽しく拝読させてもらってますが、今回の話はちょっぴり悲しい気がしてコメントさせていただきました。

Posted by: matu : 2006年02月22日 13:16

こういった時事ネタを書き込み、批判するときは
事実関係をハッキリしたほうが良いのではないでしょうか?
集団登園強要したでしょうか?
声はかけたが一度拒否し、その後自ら申し出たとニュースで聞きました。これすら事実か分かりませんが
聞きかじった話だけで他人を批判するのはどうかと思います。
ご自身のブログですが公の場であると思うのです。

結局、今回の悲しい事件は犯罪者が悪いのは当然ですが、周りの人間を攻めてよいものでしょうか?
地域、お母さん方の交流のために集団登園を行なっている保育園。今回は裏目に出ただけだと思います。
容疑者の相方、地域の人々、保育園の先生方、
誰にでも責任はあるのでは?
いつも楽しく拝読させてもらってますが、今回の話はちょっぴり悲しい気がしてコメントさせていただきました。

Posted by: matu : 2006年02月22日 13:16

ごめんなさい2度打ち込んでしまいました。
これを含め削除お願いします。

Posted by: matu : 2006年02月22日 13:18

元公務員のタネです。この幼稚園は市立幼稚園ですよね?推測ですが、園長と言っても保育師の免許や教員免許の類は持っていないと思われます。市の職員として、持ち回りの『園長』というポストに、たまたまいただけなのではないか、と思われます。質問の答えも、いかにも官僚的だと思いました。

Posted by: タネ : 2006年02月23日 22:59

公立の園長って、幼稚園教諭の免許持ってヒラ先生から登りつめないとなれないものだと思ってましたが、そうじゃないところもあるんですかね〜?テレビは見てないけど、門外漢っぽいから、かえって批判が出ないとか。

でも親同士で送りあうのってどうなんでしょ?。うちの園(市立)ではそれぞれの親が徒歩か自転車で送り迎えしてましたが、帰りにひとりのお母さんが大勢連れて帰って預かるのも問題になってました。クルマに人数分のチャイルドシートなんかもちろんつけませんよね(その点では園バスもお寒いもんですけど)。

Posted by: あいすけーき : 2006年02月24日 02:58

>あいすけーきさん
地方にもよると思うのですが、新聞に市町村職員の人事が載る事があります。それを見ていて、下記の様に書かれていました。
●山■男 市立幼稚園園長(清掃工場次長から異動)
この場合の私立幼稚園園長は、恐らく教員免許は持っていないと思います。もちろん、自治体によって扱いは違うと思います。
公立の小中学校や高校の場合、あいすけーきさんご指摘の様に、教諭→教頭→校長と出世する様です。

Posted by: タネ : 2006年02月25日 22:03

いじめの事実は、多分、具体的ではないと思うので、もう出てこないんじゃないでしょうか。お子様を亡くされたご両親のことを考えると、本気で心が痛みます。

私自身の多少の思いこみは否めませんが(なぜなら一次情報を得るために直接取材をしたわけではないので)、私は自分の見たインタビューのシーンと、ネットで読む限りの情報で、あの園長は被害者加害者または周囲の保護者、誰の気持ちに寄り添うこともなく、自分に全く責任がないと言い張っているように聞こえて、違和感を覚えたのでした。
現段階ではいじめがあったかどうかというよりは、もう完全に加害者の思いこみという線が濃厚ですが、そういう相談を受けていたということは最初のインタビューで園長が断言しており、いやがっていた事実と合わせれば「強要したも同然」なんじゃないかと、私は推測しました。もちろんそれは本人しか知らないことですし、感じ方の差もあるでしょうが、それなりに推測の根拠もまた、あるのです。
おっしゃる通り、集団登下校はメリットも多いと思います。それが裏目に出ただけというのももちろん、ある意味ではまったく真実だと思います。
ただ、あの園長に関しては、どなたもおっしゃっていないようですからそれこそ私の思いこみかも知れないのですが、あまりにも保育の現場をしらない雰囲気や言動で、それが私にはかなり腹立たしかった。この不愉快の最大の理由です。
それこそ憶測ですけれど、もし校長上がりなのだとすれば、現場を知らない人をリーダーにつけてしまったシステムや、そのシステムを運営する人たちにも真剣に考え直して頂けたらいいと思いますし、母親達でももっと話題にしてそれぞれの考えを知っておくことが安全につながります。
私自身も自分でもきっと何もできなかっただろうと思うの。いつ、その立場に立たされるかわからないのが現代です。でも、想像しても、なかなか難しい……。
もちろんご指摘の通り、何もできなかったことを、関係ない第三者が責めれば、確かにお門違いです。立腹したと書くことが、園長の批判と印象づけ、それが共感されることなく逆に不快にさせたのであれば、それは私の筆力の未熟さだと思います。
申し訳ありません。
でも、一番お伝えしたかったのは、園長に対する不快感の方ではなく、とても身近に、外国人の友達の友達が苦しんでいるにも関わらず、そんな現実さえ知らなかった無知を、私自身が反省したという点でした。本気で心傷みました。……それだけに、(まあ、実際の所、この件とあの件は全く無関係ですし、園長は犯人の苦悩まではどう頑張っても対策のとりようがなかったにせよ)、なんであんな無責任な態度でいられたの? という疑問が最初にきたため、こういう書き方になった次第です。ご理解頂ければと思います。

Posted by: ゆう子 : 2006年02月26日 03:49
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