ランチタイム間際に帰宅すると、相方は仕事部屋で歌っていた。
昼カラ部(昼間カラオケ部)の部活動で、昼過ぎに新宿に出かけるのだ。
「お。その前にメシ、一緒に行こっか?」
お外ゴハンは久しぶりだ。相方はどこに行っても「俺が作る方がうまい」と言うので、すっかりおうちゴハンが多くなっている。それは確かに事実なのだが、お外ゴハンには、味わいや健康ではない、ちょっとだけ別の意味がある。
「うわーい、じゃあ手をつないでいこう!!」
と、ひさしぶりに相方の手をとってみて、驚いた。感触、年老いてる!
よくよく見ると、手の甲もずいぶん年をとっている。シミとか浮いちゃって、相方の、手。
アジア旅行中、ずーっとつないで歩いていた手の感触は、きっと何年たっても忘れないが、まさかこんなに変わっているとは気づかずにいた。
「トシ、とったねぇ」
「お互いにね。ほら、この辺の感触が、ババアっぽい」
と、相方が私の手の甲をなぞる。
たったそれだけで。
たったそれだけのことで、なんだかぐわわーんと幸せになっちゃうんだから、我ながら、単純にできていると思う。
いや、私だけでなく、女なんて実は簡単でさ、なんとかというブランドの何が欲しいの、なんて言ってる若いお姉ちゃんのコトは知らないが、相手が関心をもっているとわかる言葉と、ほんのちょっとだけ触れてくれるだけで、案外「たっぷり」だったりするのかもしれない。
しつこく縛りつけるタイプは嫌われる昨今、「ただ君といたいんだ」ということがわかるだけで。
……別に外にゴハン食べに行こうと言われただけで、私と一緒にいたいからなんてヒトコトも発していないし、ちやほやしてくれたわけでも何でもないんだが、そこはそれ、長年の叡智で、勝手に心の声をアテレコするのよ。ふっふっふっ。
その「素材」だけでいいのに、その「素材」すら、ここんとこ全くなかったのね。
仕事部屋から階段まで、歩いて三歩あれば足りる廊下を、相方と手をつないで歩いた。
たったそれだけで、今日一日、子どもに小言を言わない心地よい余裕が生まれる。
もはや枯れかけの私には、そんなスキンシップで十分、潤ってしまうのである。
「子どもを叱りすぎなんじゃないかなあ、うちの奥さんは」
「いつもフキゲンなんだよなあ、怖いんだよ、うちの嫁さんは」
と嘆くご主人がいたら、ぜひお試し下さい。奥さんのストレスの元凶は、案外ご自分の態度なのかも。そのちょっとした気遣いで、妻は変わるわよ〜ん。
いやもう、妻のメンタル・メンテナンスは、夫としてのみならず、父親としても、数少ない重要な仕事のような気がするんですけど、いかがでしょう。
さて、私信。
さっき、心温まるメールを拝読しました。
ありがとうございます、心配かけてごめんなさい。
大丈夫、私は相方が漫画を描いている限り、どうしたってそばにいたいので、壊れることはありません。
それを相方も薄々気づいているので、足下見られちゃってて、きっと釣った魚に餌をやらなくてもいいやと思っているに違いないんですけどね。
どうでもいい話ですが、去年の春に飼ったメダカが、ビオトープとは名ばかりの水たまりに、まだ生きていました。今日見たら、濁った水の中、元気に複数、泳いでいるの。こんなに、寒いのに。
あわてて餌をやってみました。
生命力ってすごい。そう簡単には死なない力を、そんな愛を、私自身にも蓄えたいと思いました。
ま、所詮、メダカごときに何を投影しているのか、なんですけどね、ふふふ。
よかった……本当にヨカッタ!
Posted by: しえしえ : 2006年02月17日 22:00それだけのことで幸せになっちゃうゆう子さんの文章を読む、それだけで幸せのおすそ分けをいただいてます。いつもいつも。どーんと落ち込んで、でも些細なことでぱぁっと世界が明るくなる、起伏の多い性格はしんどいかもしれないけど、豊かな人生を送れますよね。毎日鈴木家のドラマを楽しみにしていますよ〜
Posted by: きゅー : 2006年02月17日 23:07HOME |
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