視覚優位、というのは、息子の個性である。
一般的な自閉ちゃんの個性ともマッチしている。
で、息子はムシキングにはまっているのだが、悲しいことに耳からの情報を処理する能力に著しく欠けるため、ポポ(主人公)の出すヒントが全く理解できない。
ものすごーく頭の悪い手を使うので、家族で見守るともうみんなが腰砕け、膝が抜け、へなへなと座り込みそうになる。
で、サンタクロースがくれた最強わざカードとレアカードの昆虫を駆使して、やっとムシマスター5級(ゲームオーバー)が限界。この先、更にお金と経験を積むと、アダー(敵役)の住む森に足を踏み入れられるシステムだが、そこには興味がないらしい。よかった、おかあさんもSEGAのそんな戦略には興味がないので、強かったねぇと言って帰る。
ところで、本日は蹴り初めの日。
園児にとってはまだお正月休みなので、サッカークラブの練習は参加人数が少ない。そのため、最後に行う五人対四人の練習試合は大変見応えがあって、応援にも力が入る。子ども達も気が抜けないから、走り続けて、ちゃんと試合になるのだ。息子たちのチームが5-1で快勝、しかもすばらしかったのは四人全員がまんべんなく大活躍したというところにあった。
ほくほくしながら帰路につく。
「ねえおかあさん、勝ったんだからムシキングだよ」
ああ、またか。お母さんは喜びの代償に大人がお金を払うのは違うと思うんだけどなあ……。しかし、自らそう交渉してきたときにいいよといってしまった以上、約束を破るわけにはいかないと思う。
少しずつ、「臨機応変」ということを指導するのが今年のテーマなので、カレンダーにきっちり予定を書いて見通しを立ててやるのは今年からやめてみた。いわば、約束や規律を守りきれない人間の弱さみたいなモノも演出してみて、それを許容することを覚えさせる。集団の社会性を育むことが目的の指導である。が、実のところ、私が約束を破るのを好まない。
「うーん、2点いれたから、じゃあ2回ね」
「ちがう。俺のチームは5点入れたから五回」
「だって、そのうち福のシュートが決まったのは2点じゃん。2回だよ」
「ちがう。サッカーはチームで点を入れるんだから、俺のチームがいれた点が俺の点。俺の入れた点は、チームの点」
……理屈だ。
成長したなあと思う。去年の今頃はまだサッカーなんか習えると思っていなかった。みんなと一緒に遊ぶといっても、どう考えてもおみそ扱いで、それでもみんなが時々構ってくれるだけで十分有り難かったのに、今では「福ちゃんと同じチームがいい!!」と友達が自分から言ってくれるようになった。先生が分けたチームに対して、5才児が本気で抗議し、俺たちは幼稚園が同じだから同じチームがいいんだと説得した子すらいる。そんなわけで練習試合のチームワークは最高で、福助はゴール前でパスがもらえる。福助自身もドリブルを抜いて運んだボールを、ちゃんと友達に託すことができる。
ああ、男の友情だわ。まさしく、ビバ、サッカーだ。
自分のシュート1点100円のムシキングごほうびシステムを見直さなければならないと思う。妙案はないものか。
ばりばり走ったので、福助は早く寝た。
今日は昼過ぎまで寝こけていたので心配だったんだが、こうやって子どもはすぐに軌道修正ができるんだな。思えば、自閉ちゃんは律儀だから、間違った習性をつけないように注意深く厳しく躾けてきた。でも、今年はもうちょっと福助自身の「生きていく力」を信じてみてもいいのかもしれない。
ばりばり走ったと言えば、今朝は私もばりばり走った。
8:30A.M.
しまった、寝過ごしたーっっっっ。
二階の仕事部屋でビデオを見ていた相方のドアをゴンゴンたたき、「一瞬でいいから、ジャックバウワーに変わって! ゴミ収集車が来ちゃう前に、ゴミを運んで」と言い、大急ぎで着替えていたら、うわあ、外からゴミ収集車の音!
「どどど、どうすんの?」
「走れ、ジャック!!」
夫が、45リットル二袋の正月生ゴミを一階のベランダから持ち出し、脱兎のごとく収集車を追う。しかし、まだ一袋、強烈な腐れゴミが台所に放置されていることに彼は気づいていない。私はそれを持って駆け出す、全力で走る。そして、相方が引き留めていた清掃員の人に手渡したのだが、そのとき、私と共に走っていたのは白髪の老婆だった。同時に、パジャマ姿の老婆もゴミを片手に飛び出してきた。戦場の気分が一転、ちょっとした運動会のような光景に見えて、ほほえましくなったわ。
ほっとして二人で帰ろうとしたとき、相方が大笑いするのだ。
私はすぐそこにあった超ミニのワンピースというか、長めのワイシャツ型スモックというか、それを羽織って駆け出すのが限界だったため、下はまあ、あの、生足だったのね。普段はそれにジーパンをはくのだが。
髪の毛はとかしていない。顔も洗っていない。
相方が笑わなければ多分誰も気づかなかっただろうに、なんだその格好はパンツいっちょだと彼が大笑いしたために、老婆達、興味津々で私をなめ回すように見る。おはようございまーすと爽やかに笑顔をふりまき、はい、帰宅もダッシュ!! パンツいっちょじゃ、ないやい。
子どもは成長する。
大人も、成長したいのだが。
チームの得点がオレの得点で、
オレの得点がチームの得点ならば、
チームの勝利1回につき、
ムシキング1回とすれば?
大人の屁理屈、がんばれ〜♪
ウチはピアノとバイクとスキーっす。
福ちゃんがんがれ。
ウチのY人(広汎性発達障害)もガンガレ。
わーい、みんながんがれ〜。
Y人くん、がんがれ〜。
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