2005年11月27日

どうぶつの森と現実のハザマで

寸暇を惜しんで、私はたぬきちさんに会いに行く。
うちのみそきちさんが世田谷区で妻子を食わすために仕事に励んでいるときに、私はポカスカ村のたぬきちさんとこっそり逢引し、彼に頼まれてお届けものをしたり花を植えたりしたのだ。
たとえ10分でも。
貝を拾い、雑草を抜き、果実を植え、街の人たちと友達になり、魚を釣る。ああ、楽しい。一人だけの家、たった一人で眠るベッドで、寝顔のゆうこは本当に幸せそうに見える。
しかし、今朝方、修行あけてわくわくしながら村にでかけていって、ぱたぱたと村を走り回っていて、突然すごいむなしさに襲われてしまった。
この10分は、例えばトイレ掃除の10分。洗濯を干すための10分にも変えられたはずだ。実生活で動物のような子どもたちにご奉仕しなければならない私が、架空のどうぶつにご奉仕している。玄関前のしおれた花を150円で買い換えなければならないのに、そっちを放置してゲームの中の村で80ベルで買った種を植えている。

主婦にはつらいのかもしれない、このゲーム。

とどうも調子が悪いリビングのコンピュータをあきらめて久しぶりに地下にもぐってコレを書いていたら、福助が遊びにきた。ここも片付ければ、福助の遊び場ぐらいは取れるんだけど、完全に物置になっている。大掛かりな家事になるととたんに腰が引けちゃうなあ。
しかしそんな物置で、容赦なく語りかけてくる福助は、村の住民より面白かったりする。
「アイスにはスリップをかけてね」
シロップだと思う。
「右だわだけだと困るんだ」
右側だと思う。
「お母さんは41歳だから、ミニカーを2個あげるね」
なぜに2個?
「マイヤヒの人(ノマネコ)のお手紙書いたから、お母さんがにこにこしたくなったから、ぜひ、待っていてください」
もはや意味不明。
こんな語録がわずか10分の間にごろごろ出てくる。動物たちより強烈なキャラである。

幼児を持つ母親には厳しいかもしれない、このゲーム。
つまり、ものすごく面白いのに、面白いのはわかっているのに、楽しめないのだ。
とても体が合う男と不倫している感じに近いんだろうか。
いや、たぬきちさんとは清らかな関係ですけれども。
ジュラシックパークを携帯の画面で見なくちゃならない感じといえば近いか。
気持ち、罰ゲーム化してしまっている感覚。
どうぶつの森と現実の家のハザマで、ゆれる主婦41歳の晩秋であった。
……切ない。


2005年11月27日 13:48
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